近年、健康志向が高まるにつれ、プロバイオティクスがますます注目を集めています。
動物の発生学的に見ても脳や心臓よりも先に発生したのは腸であり、人間の身体の中でも腸は非常に重要です。
そして、その腸を整えるプロバイオティクスは今後も発展していく分野であるといえるでしょう。
そこで本記事では、プロバイオティクスの概要から、プロバイオティクスの種類・効果の解説、おすすめの商品までご紹介します。ぜひ、最後までお読みください。
目次
まずは、プロバイオティクスとは何かについて解説します。プロバイオティクスと関わりの深いプレバイオティクスとシンバイオティクスもあわせて紹介します。
プロバイオティクスとは、ビフィズス菌や乳酸菌など人の腸に存在して人に有益な効果をもたらす「微生物」の総称です。
プロバイオティクスとして知られるようになった有用微生物を用いた発酵食品の歴史は古く、起源は諸説あります。
アラビア遊牧民族のヨーグルト、ヨーロッパやインドのワインなどがこれにあたり、7000年前には既に人類が発酵食品を作っていた形跡がみつかっています。
プロバイオティクスという言葉自体は、1989年に、英国の微生物学者Roy Fullerらにより「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義されましたが、近年では学会などにより異なる定義が提唱され統一された定義はありません。
しかし1900年代初頭に活躍したノーベル医学生理学賞受賞者である、イリヤ・メチニコフによる老化の原因となる腸内の腐敗菌を抑える菌が存在するという発見に始まり、腸内環境を整える(悪玉菌を減らし善玉菌を増やす)という近年のプロバイオティクスの基礎となる概念に繋がっています。
メチニコフの研究は20世紀に入ってからさらに科学的な関心を集め、プロバイオティクスの概念は広く一般に認知されるようになりました。
今日プロバイオティクスは健康食品の一分野として広く認知されており、様々な健康問題への有効なアプローチとして注目されるに至っています。
参考:
農林水産省|発酵食品の歴史
日本プロバイオティクス学会|プロバイオティクス/プレバイオティクスとは
プレバイオティクスとは主に有用な微生物の増殖を促進し、ヒトの胃や小腸で栄養的に消化・吸収されない「食物成分」のことです。
プレバイオティクスは消化管内の有益な細菌の増殖や活性化を促進することで腸内環境を改善し、人の健康に良い影響を与えます。
一般的なプレバイオティクスの例は、食物繊維やオリゴ糖で知られるイヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖など難消化性の多糖類です。
シンバイオティクスは、有益な微生物を直接摂取するプロバイオティクスと、その微生物の増殖を促進するための食物成分であるプレバイオティクスを、組み合わせて利用することを指します。
例えば、プロバイオティクスとして乳酸菌やビフィズス菌を摂取しつつプレバイオティクスとしてイヌリンやオリゴ糖を摂取することで、摂取した有益な微生物の増殖や活性化を促進し腸内環境の改善に役立つとされています。
プロバイオティクスには非常に様々な菌種が現在研究されたり、実用化されていますがここからは、プロバイオティクスの種類について代表定な例を2つ解説します。
乳酸菌は、健康に良い影響を与える微生物の一種です。主に乳製品や発酵食品に含まれており、人間の消化器官内や皮膚などの体表面にも存在します。
乳酸菌は乳酸を生成する性質を持ち、食品を発酵させたり、腸内環境を改善したりする役割を果たします。
主な乳酸菌の種類は、ラクトバシラス属やラクトコッカス属などです。
これらの菌は、ヨーグルト、チーズ、キムチ、醸造品などの発酵食品に含まれています。
乳酸菌を含む食品をバランス良く摂取することで、腸内環境の改善や健康維持に役立ちます。
もうひとつ重要なプロバイオティクスとして、酪酸菌があります。酪酸菌とはその名の通り「酪酸」を生成する性質を持ち、腸内環境の正常化に貢献しています。
酪酸菌の種類としてあげられるのはフィーカリバクテリウム属やクロストリジウム属です。
クロストリジウム属は酪酸だけでなく酢酸やプロピオン酸という短鎖脂肪酸も生成し、大腸を動かす重要なエネルギー源となります。
また芽胞(がほう)と呼ばれる過酷な状況に耐えられる形態に変化する性質があり、熱や胃酸にも耐えることが可能です。
プロバイオティクスには、人間の健康にとって有益な効果が多数確認されています。
今回はその効果について3つご紹介します。
近年、患者数が増加の一途をたどるアレルギー疾患に対し、プロバイオティクスによる抗アレルギー作用が注目を集めています。
「免疫は腸から」という言葉がありますが、腸管内にはTreg細胞(制御性T細胞)という免疫維持に不可欠なT細胞のサブセットが存在します。
近年の研究により、Treg細胞は自己抗原を細胞表面に提示する正常な細胞を免疫細胞から守ったり、免疫が過剰に応答することを抑える働きがあることが分かってきました。
アレルギーというのは免疫の過剰反応であり、Treg細胞は腸からアレルギーの発症を抑制するようコントロールしている存在といえます。
このTreg細胞の増殖および分化促進に深く関わっているのが、酪酸菌が生成する酪酸です。
酪酸菌を含む製剤や酪酸菌のプレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖などの摂取により、抗アレルギー作用の増強が期待できます。
参考:日本プロバイオティクス学会|プロバイオティクス/プレバイオティクスとは
プロバイオティクスの効果としてあげられるのは、免疫賦活作用です。プロバイオティクスは、腸管内で様々な免疫細胞に刺激を与え、免疫細胞はIL-10やIL-12など複数のIL(インターロイキン:免疫細胞が分泌する液性因子の一種で、細胞間のコミュニケーションに用いられる)を誘導し、免疫を調節しています。
特にIL-12は免疫細胞であるNK細胞(ナチュラルキラー細胞:がん細胞などの異物を攻撃する細胞)の刺激因子であり、NK細胞を活性化することで抗がん作用も期待できます。
また乳酸菌の免疫調節機能にはアレルギー症状抑制の効果もあるとされており、活用できるシーンは今後さらに増えるといえます。
これは免疫細胞が排除すべき有害微生物をプロバイオティクスが代わりに直接排除してくれる、免疫代替機能と言えるでしょう。
つまりプロバイオティクスの免疫賦活作用を活かせば、間接的・直接的に宿主の免疫機能を改善することも可能です。
参考:2007,Japan Society for Lactis Acid Bacteria|乳酸菌の免疫調節機能
一部のプロバイオティクスには、糖尿病の進行抑制効果が認められています。プロバイオティクス単独での医学的な根拠はまだ十分に集まってはいませんが、抗糖尿病薬との併用により、耐糖能の改善に相乗効果が確認されました。
またⅠ型糖尿病患者の臨床試験においても、プロバイオティクスの併用により、インスリン投与量の減量が可能であったという報告もあります。
さらにプロバイオティクスと糖尿病治療薬の併用は、下痢や腹部膨満感など薬の副作用の軽減に繋がるため、投薬の負担減少にも役立ちます。
参考:腸内細菌学雑誌24 : 273–279,2010|糖尿病に対するプロバイオティクスの効果
ここからは、プロバイオティクスが含まれるおすすめの食品についてご紹介します。
プロバイオティクスが含まれる食品でおすすめの食べ物には、ヨーグルト・納豆・キムチ・ぬか漬け・ザワークラウト・テンペなどがあります。
特にヨーグルトは乳酸菌を多く含み、腸に良いとされる食品の代表格です。においもそれほど強くないので、納豆やキムチなどにおいが強い発酵食品が苦手という人でも摂取しやすいでしょう。
他には、サラダ感覚で食べられるザワークラウトもおすすめです。
なお、プロバイオティクスに関しては「生きた菌が届く」ことも大切ですが、たとえ死菌であっても菌の種類によっては菌体成分が免疫賦活作用を示したり、腸内環境の改善や様々な保健効果が近年示されております。
プロバイオティクスが含まれる飲み物には、甘酒・ヨーグルト飲料・ケフィアなどがあげられます。特に米に麹菌を掛け合わせて発酵させた甘酒は飲む点滴といわれるほど栄養豊富でノンアルコールであるため、老若男女を問わず誰でも飲めます。
また、ケフィアは牛乳や山羊の乳にケフィア粒を入れて発酵させた飲み物です。ケフィアは「良い気分」を意味するトルコ語で、乳の中の乳糖が発酵されて乳酸になるため、乳糖不耐症の人でも飲める人が多いとされています。
さらにケフィアを摂取することで乳糖が消化でき、乳糖不耐症が改善するという報告もあります。
参考:東京家政学院大学紀要 第50号 2010年|ケフィア摂取がヒトの便通に及ぼす影響
プロバイオティクスは味噌・醤油・塩麹・酢などの調味料にも含まれています。中でも味噌は大豆を米麹・麦麴・豆麹などで発酵させて作られており、ミネラルやアミノ酸などの栄養も豊富です。
味噌汁の具を工夫したり、野菜と和えたりすることでシンバイオティクスとしての効果も期待できます。
ただし殺菌加工されている調味料もあるため、慎重に選択する必要があります。
弊社ではプロバイオティクス事業推進の一環として、機能性食品である多穀麹®をご用意しています。
戦後から食の欧米化が進み、食生活が豊かになったように見える一方で、変化した食生活により様々な生活習慣病が引き起こされることも分かってきています。
多穀麹®は7種類の穀物(大麦、あわ、ひえ、きび、タカキビ、紫黒米、米)を麹菌で発酵させた機能性素材です。動物性たんぱく質の消化を助け、便通や腸内細菌叢の改善を促す効果があります。多穀麹®には生菌タイプの多穀麹®50M、殺菌タイプの多穀麹®BFの2種類がございます。この機会にぜひ一度お試しください。
本記事ではプロバイオティクスの概要から、プロバイオティクスの種類・効果の解説、おすすめの商品までご紹介しました。
プロバイオティクスは消化器官内で有益な影響を及ぼす微生物であり、免疫賦活作用や腸内細菌叢の改善、炎症の抑制などの効果により、健康増進に重要な役割を果たします。
新しい事業としてプロバイオティクスを製品開発に積極的に取り入れ、健康意識の高まりに応えましょう。
一覧へ戻る