近年、腸内環境のケアに役立つものとして、酪酸菌が注目されています。
酪酸菌はプロバイオティクス・プレバイオティクスの観点においても重要視されており、多くの企業で酪酸菌のサプリメントが販売されるようになりました。
一方、酪酸菌には「副作用があるのではないか」と否定的な意見が提示されることも少なくありません。実際、酪酸菌には摂取するうえで注意すべきポイントがあります。
そこで本記事では、酪酸菌の副作用について解説します。酪酸菌を利用した整腸剤を摂取する際のリスクや、酪酸菌の効果を最大限に活かす方法などについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
現時点では、酪酸菌の明確な副作用は報告されていません。
元々酪酸菌は生物の消化器官内に生息する常在菌であり、日本人には「宮入菌」と呼ばれる菌株が有名です。
しかし体質による影響により、酪酸菌を摂取することで何らかの症状が発生する可能性はあります。
また、後述するように酪酸菌は過剰摂取によって体調が悪化するリスクがある点には注意しなければなりません。
酪酸菌は明確な副作用こそ確認されていないものの、摂取し過ぎると健康被害をもたらす危険性があります。
本章では酪酸菌の過剰摂取によって発生するリスクについて解説します。
酪酸菌は便通を促進したり、腸管免疫を活性化したりするなど、腸内環境を整えるうえで有益な効果が期待できます。
しかし酪酸菌を過剰摂取すると、かえって腸のバリア機能が破壊されるリスクが高まる点には留意しなければなりません。
酪酸菌は酪酸を産生する働きがありますが、酪酸は適度な濃度であれば、腸のバリア機能の維持に役立ちます。
ただし酪酸菌の過剰摂取によって酪酸の濃度が高くなると、アポトーシスを誘発するようになり、腸のバリア機能をかえって破壊するリスクを高めます。
アポトーシスとは細胞の自然死を意味する用語であり、多発するとバリア機能に不可欠な粘膜が弱体化する可能性があります。酪酸菌を摂取するなら、過度な摂取を行わないように気を付けましょう。
腸内で増殖する酪酸菌は善玉菌であり、大腸がんの抑制などの効果をもたらしてくれます。
一方で、口腔内で増殖する、歯周病菌として有名な嫌気性細菌であるPorphyromonas gingivalisは酪酸を産生する事が知られ、逆の効果をもたらす可能性が報告されています。
大腸がんのリスクを確実に抑制するなら、腸内環境だけでなく口内環境にも配慮する必要があります。
参考:細胞老化の誘導を介して大腸がんの発症を促進させ得る腸内細菌を同定
医薬品で用いられる酪酸菌の菌種自体に副作用は報告されていませんが、整腸剤にはいくつかの副作用があることが報告されています。整腸剤を有効的に活用するため、確認しましょう。
軟便とは、大量の水分が含まれることで便が通常より軟らかくなった状態です。一般的に軟便は食べ過ぎ・飲み過ぎ・食中毒・ストレスなどによって生じます。
しかし、ビフィダーのような整腸剤の副作用として軟便が発生するケースが報告されています。なお、ビフィダーはビフィズス菌を含んだ整腸剤であり、酪酸菌は含まれていません。
参考:医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等に関する専門委員会の第5回資料|厚生労働省
腹部膨満感とは、お腹が張っていたり、膨らんでいたりするような感じが発生している状態です。
酪酸菌やビフィズス菌などが配合されているラックビー錠では、まれに腹部膨満感が発生する副作用が発生します。
また、服用した人の体質にもよりますが、ラックビー錠はアナフィラキシー症状のような重篤な副作用を招くリスクがあります。
ごくまれにしか発生しない副作用ですが、過去に薬剤を服用して発疹などの症状が出た人は注意が必要です。
参考:医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等に関する専門委員会の第5回資料|厚生労働省
酪酸菌には副作用こそ報告されていないものの、過剰摂取によるリスクは避けなければなりません。本章では、過剰摂取を防ぐうえで企業側が意識すべきポイントについて解説します。
医薬品には用法・用量が記載されていますが、食品であるサプリメントには用法・用量がなく目安量としての記載しかできません。酪酸菌サプリメント開発においては摂取目安量をわかりやすく明記しましょう。
摂取目安量の表記は過剰摂取を防ぐうえでもっとも基本的な取り組みです。
企業側も消費者がリスクを避けられるよう、適切な摂取目安量を明記しましょう。
また、複数のサプリメントや医薬品を同時に服用することは過剰摂取につながります。
そのため、過剰摂取を防止する取り組みとして、医薬品の酪酸菌も服用している方にはかかりつけ医師や薬剤師にサプリメントの飲み合わせを相談するように誘導する事も重要です。
消費者が正確な知識が得られるように、自社のWebサイトなどで過剰摂取のリスクを伝えることも有効な施策です。上記の酪酸菌の過剰摂取によるリスクはまだヒトで実証されているものではないため、その点を明記した上で論文などを紹介する事は一つの方法です。
昨今はインターネットやSNSを利用し、消費者が自力で情報を集めるようになっています。
しかし、インターネット上には誤った知識やデマが流布することも珍しくありません。
もし消費者が誤った情報を鵜呑みにすると危険な服用をしたり、自社製品の風評被害につながったりする恐れがあります。
自社のオウンドメディアで正しい情報を記載し、注意喚起をすれば、誤った情報のリスクを回避できます。
酪酸菌を積極的に摂取していても、効果が出ていないと感じる人もいます。
しかし、酪酸菌の効果が出ないことが、必ずしも異常に直結するわけではありません。
酪酸菌の効果がないと感じる方には、以下のポイントを呼びかけましょう。
他の成分と同様に、酪酸菌の効果には個人差があります。基本的に酪酸菌は摂取してから約5時間程度で腸内に行き渡るとされており、そこから腸内環境が改善されるまでは2週間~1カ月程度かかります。
酪酸菌の効果が出るのに時間がかかる理由は、腸内フローラです。
人間の腸内には、腸内フローラと呼ばれる腸内に生息する細菌が約数兆匹もいます。そのため、酪酸菌が腸内フローラのバランスを整えるまでには一定以上の時間がかかります。
加えて、個人の体質も効果に影響を及ぼす要素です。人によっては酪酸菌の効果が数日で感じられる場合もあれば、1カ月以上かかる場合もあります。
いずれにせよ、酪酸菌の効果は摂取してすぐに発揮されるものではありません。
長期的に健康状態を確認しながら、酪酸菌の摂取を続けることが重要です。
同じような形状をしていることから、サプリメントと医薬品を混同しているケースは珍しくありません。しかし、両者には大きな違いがある点には注意が必要です。
サプリメントはあくまで栄養補助を目的としたものであり、「特定の成分を濃縮させたカプセルや錠剤」です。あくまで特定の成分を摂取することが目的であるため、医薬品のように特定の症状を治療したり、緩和させたりするものではありません。
そのため、即効性のある医薬品とは違うことは明確にしましょう。また医薬品ではない場合、薬機法にふれる記載はしないよう注意します。
酪酸菌は、ただ摂取するだけでなく、意識すべきポイントがあります。
より効果を高めるためにも、重要なポイントを必ず確認しましょう。
先述したように、酪酸菌の効果は一朝一夕で発揮されるものではありません。そのため、継続的に摂取することが重要です。
酪酸菌に限らず、腸活のために乳酸菌を摂取する際も同様です。腸内環境を改善するには、毎日酪酸菌や乳酸菌を摂取し、善玉菌が優勢な環境を構築しなければなりません。
食事やサプリメントを通じて、毎日酪酸菌を摂取するように心がけましょう。
酪酸菌はぬか漬けや臭豆腐などに含まれていますが、乳酸菌や麹菌と比べるとしっかりした安全性が報告されている菌の種類が少ない傾向があります。また、食事から摂取できる酪酸菌の量にも限界があるため、食生活の改善だけで腸内環境の改善は困難です。
酪酸菌を継続して摂取するなら、サプリメントを追加しましょう。日常生活での食事にサプリメントを付け足すだけでも、効率的に酪酸菌を摂取できます。
近年では、酪酸菌を摂取するだけでなく、適度な有酸素運動をおこなうことで酪酸菌を増やす効果があると判明しました。
イリノイ大学の研究では、ウォーキングのような軽い有酸素運動を実践するだけでも、酪酸菌を増やす効果があるとしています。
週3回・60分程度の運動でも効果があるため、酪酸菌を摂取する際は積極的に運動しましょう。
酪酸菌の効果をさらに発揮させるためには、食物繊維の積極的な摂取も効果的です。食物繊維には酪酸菌の増殖を促進する効果があり、酪酸の増加にも役立ちます。
食物繊維は他の善玉菌の増殖や、便通の改善など、さまざまな効果が期待できる栄養素です。
海藻類やキャベツ・さつまいも・ごぼうなどの野菜のような食品を組み合わせれば、より効果的に腸内環境を改善できます。
酪酸菌には副作用こそありませんが、過剰摂取すると身体に悪影響を及ぼす恐れがあります。
酪酸菌を使用していない整腸剤も同様であるため、医薬品を使用する場合は用法・用量を守って摂取するように心がけましょう。
酪酸菌の効果を最大限発揮させるなら、運動や食物繊維の摂取など、さまざまな取り組みが効果的です。サプリメントを摂取するだけでなく、より効率的に酪酸菌の効果を発揮できる方法を実践しましょう。
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