食べ物を食し消化をすることで栄養を吸収する一連のプロセスは、私たちの生命活動に必要不可欠です。
消化酵素はこのプロセスのなかでも特に食物を酵素分解するうえで重要なものであり、中でもプロテアーゼと呼ばれる消化酵素はタンパク質を分解してアミノ酸に変える役割を果たします。
そこで本記事では消化酵素が酵素分解をしてタンパク質からアミノ酸を生成する仕組みや、消化酵素の効果についてわかりやすく解説します。
消化酵素や酵素分解に興味がある企業の方は、ぜひ参考にしてください。
タンパク質の酵素分解は、私たちの身体がアミノ酸やペプチドを栄養として取り込み、エネルギーを生み出し細胞を構成するタンパク質を合成する素となる重要な過程です。
タンパク質の酵素分解が滞ると、栄養不足や消化器系のトラブルが引き起こされる可能性があります。
酵素分解を滞りなくするためには、日常生活で適切な栄養を摂取し、消化を促進させることが重要です。
タンパク質を分解する消化酵素には、主にプロテアーゼと呼ばれるタンパク質分解酵素があります
これらの酵素はタンパク質をペプチドという小さな断片に分解し、最終的にアミノ酸に変える働きをします。
アミノ酸は体内で様々な重要な機能を果たす栄養素であり、細胞の構築や修復、ホルモンや酵素の合成などに必要不可欠です。
タンパク質は通常巨大な分子であり、そのままの状態では小腸から吸収できません。消化酵素がなければ、私たちの身体はタンパク質をアミノ酸やペプチドに細かく分解して効率的に吸収することができず、栄養不足や消化器系の問題が生じる可能性があります。
したがって消化酵素は消化活動の正常な進行に欠かせない要素であり、健康な身体を維持するために重要な役割を果たしています。
ここからは、消化酵素の種類と働きについて詳しく解説します。
タンパク質を分解する主要な消化酵素の一つは、プロテアーゼと呼ばれます。この酵素は、食物中のタンパク質をペプチドという小さな部分に分解してアミノ酸に変えます。
デンプン質を糖に分解する役割の消化酵素は、アミラーゼと呼ばれます。主に唾液や膵臓から分泌され、口腔内や小腸でデンプン質の分解を開始します。
タンパク質同様デンプンも巨大な分子であり、このままでは吸収できないためこの消化酵素の働きにより身体はデンプンを糖に分解して効率的に吸収し、日常生活に必要なエネルギー源として利用することが可能です。
食物中の脂質はコレステロールと中性脂肪から構成されますが、ほとんどが中性脂肪(トリアシルグリセリド)の状態で存在し、そのままでは体内に吸収できません。
脂肪分解酵素であるリパーゼは、食物中の中性脂肪をグリセリドと脂肪酸に分解します。
リパーゼは主に膵臓から分泌され、小腸で中性脂肪の消化を助けます。
脂肪酸とグリセリドは私たちの身体に必要な栄養素であり、エネルギー源としても機能してくれるので、リパーゼも重要な消化酵素です。
タンパク質分解酵素であるプロテアーゼには多くの種類が存在します。
これらの酵素は消化管内で異なる段階で酵素分解し、タンパク質をペプチドやアミノ酸に変えて栄養素を吸収するのに必要です。
ここでは、代表的なタンパク質分解酵素を詳しく解説します。
【体内で産生されるタンパク質分解酵素】
ペプシンは、胃の中でタンパク質を分解する消化酵素の一種です。
おもに胃の粘膜上皮細胞で産生され、胃液中に分泌されます。
ペプシンの主な特徴は、酸性条件下での活性です。
胃の中では塩酸と共に胃液として分泌されることで、pHが非常に低い酸性環境が作られます。
この酸性環境下では、ペプシンがタンパク質のペプチド結合を切断し、より小さなペプトン(ポリペプチド)などに分解します。
タンパク質は、身体に必要なアミノ酸の供給源であり、胃のペプシンによってまずある程度まで小さく分解され、つづく小腸でさらに小さく分解されることで消化管での吸収が促進されます。
トリプシンとキモトリプシンは、膵液に含まれる消化酵素です。主に十二指腸に分泌され、そこで働きます。
これらの酵素は、主に胃である程度小さく分解されたタンパク質やペプトンなどをオリゴペプチドに分解するのに特化しています。
トリプシンは中性から弱アルカリ性の環境下で最も効率的に作用し、リシンまたはアルギニンに続くペプチド結合を切断します。生成される消化器官は膵臓です。膵臓でトリプシンの前駆体であるトリプシノーゲンから生成されます。
一方、キモトリプシンは弱アルカリ性の環境下で最も活性が高まります。
キモトリプシンは前駆体であるキモトリプシノーゲンから生成され、特にフェニルアラニンなど芳香族アミノ酸のカルボキシル基を切断します。
十二指腸までは消化のみを行いますが、次の空腸からは吸収上皮細胞と呼ばれる絨毛を構成する細胞上に各種のペプチダーゼと呼ばれる消化酵素を分泌し、オリゴペプチドを最後にジペプチドやトリペプチド、アミノ酸にまで分解し体内に吸収します。
このようにこれらの酵素は、消化管内でタンパク質を順に小さく分解し、吸収可能な形に変えることで栄養素の吸収を促進します。
パパインは、パパイヤに豊富に含まれるタンパク質分解酵素です。
最も活性が高まるのは中性からアルカリ性の環境ですが、。幅広い基質特異性を持つ事から使いやすい消化酵素です。主に食用肉のタンパク質軟化目的で用いられます。
ブロメラインは、パパイヤやパイナップルなどの果物に含まれる消化酵素で、主に未熟な果実や葉に多く見られます。
中性からアルカリ性の環境で最も活性が高まるタンパク質分解酵素です。ブロメラインは食品(肉軟化、製菓など)、化粧品(ピーリング)、繊維(タンパク質を分解して食物繊維だけ残す)などの産業分野に加え、医薬品や医療分野においても様々に利用されています。
ここからは、タンパク質分解酵素を多く含む果物と野菜を紹介します。
代表的なプロテアーゼが多く含まれる果物には、パイナップルが挙げられます。
パイナップルに含まれるプロテアーゼの一種であるブロメラインには、タンパク質を分解する働きがあります。
またキウイやパパイヤもプロテアーゼを豊富に含んでいます。
これらの果物を食べるのにおすすめの方法は、加熱することなく生食することです。
生食することで、消化を助けるとともにタンパク質の吸収が促進されやすくなります。
プロテアーゼを多く含む野菜のひとつには、キュウリが挙げられます。
キュウリに含まれるプロテアーゼは、消化を助けるだけでなく、消化管の健康をサポートする働きもあります。
また、大根やセロリもプロテアーゼを多く含んでいます。
これらの野菜を可能であれば生食することで、消化酵素の働きが活発になり消化をスムーズにできます。
生命活動の消化に必要なタンパク質分解酵素ですが、体内に取り入れる際に気をつけたいこともあります。
ここからは、タンパク質分解酵素を摂取する際の注意点について詳しく解説します。
タンパク質分解酵素は熱に弱く、高温にさらされるとその活性が低下します。
したがって加熱調理された食品や熱湯での調理を受けた食品からは、十分な酵素を摂取できない可能性があります。
タンパク質分解酵素を多く取り入れるため、生のままで果物や野菜を提供したり、加熱を最小限に抑えた料理を選択してください。
一部の人にとって、タンパク質分解酵素に対する食物アレルギーが問題となる場合があります。
顧客に提供する前に、アレルギー反応を誘発する果物や野菜、食物が商品に含まれていないか確認してください。
製造の過程においても、アレルゲンとなる食材を使用していると食べた方に影響が出ます。
すべての製造工程において、どのような食品が使用されているのか細かく調査する必要があります。
タンパク質分解酵素は様々な動植物が持つ生理活性物質であり、加工していない食品などに元々程度の差はありますが含まれているものです。
近年は加工食品や添加物によりこの酵素を摂取する機会が減少したと言え、活性が十分残った食品を積極的に体内に摂取することは、健康的な生活を過ごすうえで重要です。
消化酵素は私たちの消化システムをサポートし、栄養を効果的に吸収するのに役立ちます。
ただし酵素は熱に弱く、加熱すると十分な効果を得られない可能性があります。
また食物アレルギーの問題もあるため、タンパク質分解酵素を活かした製品を作る際には注意が必要です。
企業として提供する商品に最善の注意を払うことで、顧客の健康維持に繋がるでしょう。
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