研究開発コラム
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糖化菌の効果と有用性を徹底解説!麹菌や糖化酵素との違いや糖化菌の保健効果からバイオマスへの活用まで!発酵技術がもたらす可能性とは?

「糖化菌の効果ってどんなもの?」「乳酸菌や麹菌と何が違うの?」「健康や環境にどんなメリットがあるの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。糖化菌は食品や医薬品、さらにはバイオマス分野で幅広く活用されており、発酵技術と組み合わせることで多くの有益な効果をもたらします。 この記事では、糖化菌の基本的な効果や麹菌・糖化酵素との違い、腸内細菌や乳酸菌との関係、健康効果、さらにはバイオマスへの応用について詳しく解説します。

※研究開発コラムは微生物を活用した研究開発において参考になるトピックを集めたもので、全てのテーマについて当社が研究開発を実施しているわけではございません。

糖化菌とは?基本的な特徴と働き

ここでは糖化菌の基本的な分類と特徴や産業での利用などについて大まかに概説いたします。

糖化菌の基本的な特徴と働きについて

糖化菌は、狭義では主にでんぷんなどの炭水化物を糖化酵素(アミラーゼなど)で分解して単糖や二糖に変え、エネルギーを生成する微生物で、主に細菌のうち枯草菌や枯草菌の亜種である納豆菌などを指します。また真菌ではアミラーゼなどを産生する麹菌が該当しますが、広義ではセルロースなどを分解する糖化酵素を産生する他の微生物(担子菌、子嚢菌)全般も指すと言って良いでしょう。これらの菌は、デンプンやセルロースなどの複雑な多糖類を発酵してシンプルな糖に変える能力を持つ点で特徴的です。糖化菌は、発酵食品やアルコール製造、バイオエタノール生産など、様々な産業で利用されています。日本語ではよく似た言葉で「糖化反応」がありますが、こちらは非酵素的にタンパク質などに糖が結びつく反応を指しますので、全く異なる現象です。よく体内で過剰な糖により起こる「糖化反応(glycation)」と糖化菌の「糖化酵素(diastatic enzyme)」の「糖化」が混同されますが、全く異なるものだと覚えておくと良いでしょう。

参考:
(独)製品評価技術基盤機構(nite)バイオテクノロジー>糖化酵素系モデル菌株

糖化菌の分類と種類

糖化菌は、主に真菌と細菌に分類されます。真菌のうち、麹菌を含む糸状菌(Aspergillus属、Rhizopus属など)は穀物などの固い細胞壁(セルロースやでんぷん)を分解する様々な消化酵素のセルラーゼやアミラーゼを分泌する事で、穀物を餌にして糖代謝を行う事でエネルギーを作ります。一方で真菌のうちキノコなどの担子菌や子嚢菌は樹木やその落ち葉などの固い細胞壁(セルロースや高分子リグニン)をセルラーゼやラッカーゼなどの消化酵素で分解して同様にエネルギーを得るように進化してきた微生物です。また真菌の酵母の中でも最も汎用される、Saccharomyces cerevisiae種は一般的に糖化酵素を持たず、麹菌などが分解してくれた単糖を利用してエネルギーを産生し最終的にエタノールを代謝産物として産生します。一方、細菌の中では、納豆菌などが含まれるBacillus属がデンプンや他の多糖を分解する酵素を持ち、糖化に寄与します。また近年では遺伝子組み換え技術の進歩により、バイオエタノールを生産する際にキノコや麹菌の糖化酵素遺伝子をエタノール耐性のある酵母菌(S. cerevisiae)に組み込む事で、効率的にバイオマス(セルロースなど)から組換え酵母菌のみでバイオエタノールを生産する技術などが開発されています。

参考:
國武 絵美ら「転写制御からみる糸状菌の多糖資化戦略糸状菌における多糖の好き嫌い」(Kagaku to Seibutsu vol. 57 No. 9 2019)
金野尚武「きのこ類が生産する糖質加水分解酵素」(MOKUZAI HOZON(Wood Protection) vol. 39 No. 2 2013)
農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)「Ⅲ. バイオエタノール生産用ストレス耐性酵母の 開発と特性評価」

糖化菌の働き

❶複雑な炭水化物の分解

糖化菌は、デンプン等の高分子糖質を分解するためにさまざまな糖化酵素(加水分解酵素)を生産します。例えば、アミラーゼはデンプンをマルトースやグルコースに分解し、エネルギーを取り出します。さらにデンプンが分解されたマルトースは、他の微生物(乳酸菌など)が持つα-グルコシダーゼによりグルコースに分解されます。これらの酵素はヒトの体内でも生産されており、たとえばアミラーゼは唾液中や膵液に含まれα-グルコシダーゼは小腸の絨毛細胞表面に分泌され、デンプンを単糖(グルコース)まで分解して吸収し、細胞のエネルギーに変える事がます。

❷発酵の連続プロセス

発酵食品の製造工程として、糖化菌により生成されたブドウ糖などの単糖や小糖は次に酵母や乳酸菌によって発酵され、エタノールや乳酸等が生成されます。糖が分解されていく過程でそれらの菌が生存するためのエネルギーが生成され、また産生されたエタノールや乳酸は食品の保存性や風味を向上させたりする役割も担います。

❸糖化菌の応用

上記のように糖化菌(麹菌)と酵母菌を組み合わせた発酵プロセスは、たとえば日本の伝統的な酒造りにおいては並行複発酵と呼ばれ、糖化菌がデンプンを糖に変え、同時に酵母が発酵を促進してアルコールが生成されます。その他に近年では未利用バイオマスを有効活用する方法として海藻を麹菌で発酵させた新しい発酵食品の研究・開発なども行われています。

❹バイオエタノールの生産

近年、バイオエタノールの生産においても糖化菌の重要性が増しています。バイオ燃料の一つであるバイオエタノールは、糖化プロセスによって生成されたブドウ糖を利用して生産されます。この方法は、化石燃料に依存しない持続可能なエネルギー源を提供します。

参考)
古川壮一ら「微生物の共存・共生と伝統的発酵」(日本醸造協会誌 vol.109 No.4 2014)
佐々木化学薬品株式会社「α-グルコシダーゼについて」
内田基晴「海藻発酵技術の研究と応用」(日本水産学会誌 vol.87 No.5 2021)
日本酒造組合中央会「日本酒の製造工程」
小杉昭彦「サーキュラーエコノミーを可能にする微生物糖化技術国際農研が進めるバイオマス研究とその社会実装への挑戦」(Kagaku to Seibutsu vol.61 No.7 2023)

糖化菌の効果とは?健康や発酵食品への影響

糖化菌とは、デンプンを糖に分解する能力を持つ菌のことで、主に納豆菌や麹菌がこのカテゴリーに含まれます。糖化菌は腸内環境の改善に寄与し、様々な健康効果をもたらすことが知られています。本稿では、糖化菌の効果、健康への影響、発酵食品での役割について学術論文を引用しながら解説します。

糖化菌の基本的な役割

糖化菌は、腸内で食物の消化酵素であるアミラーゼを産生し、デンプンを糖に分解します。このプロセスによって生成された糖は、腸内環境を整える乳酸菌やビフィズス菌の栄養源となります。これにより善玉菌が増殖し、様々な健康増進効果を持つ短鎖脂肪酸(SCFA)が腸内で増加して腸内フローラが改善されることが報告されています。特に、納豆菌は糖化菌の一種であり、芽胞と呼ばれる酸や熱に強い形態に変化する事ができるため、胃酸や胆汁に耐性があり生きたまま腸に届きやすく、より効果的な腸内環境の改善が期待できます。

参考:
國澤純「『精密栄養学』の現状と今後の期待」(一社)全国発酵乳乳酸菌飲料協会 
東亜薬品工業株式会社 糖化菌 BM菌末トーア

 健康への影響

糖化菌は健康に対して腸内環境の改善を通じ様々なポジティブな影響を及ぼすことが示されています。主に動物に対する保健効果の研究が進んでおり、糖化菌の一種である枯草菌(Bacillus subtilis)の大豆発酵物は感染防御や卵殻強化、肉質改善、便臭改善などの効果が家畜で示されています。また他にも、ペットの健康として犬の免疫力を向上する事が報告されています。糖化菌は腸内の悪玉菌を抑制し、便通の改善や免疫機能の向上に寄与することが分かっています。糖化菌は特に、腸内で細菌叢による短鎖脂肪酸の生成を助けることが知られており、これが腸の健康を支えています。また、ヒトでは腸内環境の改善として医薬品として用いられる事もあり、便秘や下痢の予防が報告され、腸内菌叢の改善はさらに生活習慣病のリスクを低下させることにもつながります。一部の研究では、糖化菌が腸内微生物叢のダイナミクスを改善し、個人の健康状態を向上させることが示されています。

参考:
鈴木宏美ら「Bucillus subtilis C-3102株大豆発酵物のヒト腸内環境改善効果」(腸内細菌学会誌 vol.18 2004)
医療用医薬品:ビオスリー添付文書情報
桑原正人ら「Bacillus subtilis DB9011 菌株による犬の外科的侵襲後の細胞性免疫能低下の防御効果」(日本獣医師会雑誌 vol.58 No.10 2005)

発酵食品への寄与

発酵食品は、善玉菌を含む食品であり、糖化菌もその中に含まれます。特に納豆、味噌、醤油、酒などの発酵食品には糖化菌としての『納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)』や『麹菌(Aspergillus oryzae)』が豊富に含まれており、古代から保存のためだけでなく人々の健康に役立つ発酵食品を生産するために、これらの菌は欠かせない存在でした。納豆菌も麹菌も、日本の発酵食文化を支える重要な菌ですが、私たちの祖先が何世代もかけて育種してきたことで、ヒトに害を及ぼす事のない安全な菌として確立されてきたのです。また糖化菌は性質上、発酵食品に用いられる他の菌とも共生しやすく、腸内でも食物繊維やオリゴ糖を摂取することで、腸内の善玉菌の働きをサポートします。このように、糖化菌は発酵食品の中で相乗的に機能し、腸内の微生物群が良好なバランスを保つ手助けをしています。

糖化菌の研究動向

近年の研究では、糖化菌の作用機序として主たるデンプン分解酵素(アミラーゼ)の働きだけでなく、二次代謝産物に関する理解が進んでおり、特にその二次代謝産物が腸内の微生物叢やヒトに与える影響に注目が集まっています。例えば、麹菌が生成するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)は、消化を補助する医薬品として精製し用いられますが、近年の研究では消化だけでなくプロテアーゼが善玉菌の増殖を助け悪玉菌の増殖を抑えるプレバイオティクス素材として有効であることが示されています。更に、麹菌のプロテアーゼがタンパク質を分解して得られるペプチドやアミノ酸の中に、ピログルタミルペプチドというペプチドが含まれ、このペプチドは抗肥満効果や肝機能保護作用などをごく少量で効果を示す事が報告されています。また黄麹菌は近年健康効果が注目されているポリアミンの一種である、アグマチンと言う物質を産生する事も知られており、アグマチンはうつ病や学習障害、神経変性や依存症などにも有効であることが示されつつあります。このように麹菌はその特徴である消化酵素(プロテアーゼ、アミラーゼ)のみを分離精製し医薬品として用いる事もありますが、様々な二次代謝産物の有用性を考えると菌そのものを摂取することでよりよい保健効果が期待できると言えるでしょう。また麹菌も納豆菌も、アミラーゼなどの多糖分解酵素といったタンパク質を大量に生産することから、タンパク含量の高い微生物の開発に応用され、『代替肉』などの原料に用いるなどの研究も進んでいます。また次章で示すようにバイオマスの活用に欠かせない菌として注目されています。

参考:
楊永寿ら「次世代プレバイオティクス:麹菌プロテアーゼ」(生物工学会誌 vol.97 No.4 2019)
鄭屹峰ら「麹発酵により生じたペプチドおよびアミノ酸代謝物の機能」(日本醸造協会誌 vol.117 No.1 2022)
赤坂直紀ら「麹菌によるアグマチン高含有糖化液 (甘酒) の開発」(生物工学会誌 vol.97 No.4 2019)
フェルメティクス株式会社2024年2月8日プレスリリース「慶應義塾大学発フードテックベンチャー納豆菌の粉末を高たんぱく食材として実用化」
お多福醸造株式会社2024年6月6日プレスリリース「「マイコプロテイン」の事業化を目指しバイオベンチャーらと開発契約を締結 米を原料に、米麹の力でつくる次世代タンパク質の製法開発にチャレンジ」

糖化菌とバイオマスの関係とは?持続可能なエネルギーへの応用

これまでに述べてきた食用の納豆菌や麹菌(糸状菌)とは別種の糖化菌の糖化作用は、バイオマスの分解にも応用されています。バイオマスは再生可能な資源として注目されており、糖化菌を利用することで有用なエネルギー源に変換することが可能です。特にバイオエタノールの製造において、糖化菌は重要な役割を果たしています。バイオエタノールは化石燃料の代替エネルギーとして利用されており、環境負荷の低減にも貢献します。

糸状菌・担子菌の糖化酵素を用いた産業利用

担子菌は、特に木質バイオマスの糖化に利用される重要な微生物群です。これらの菌は、リグニン、セルロース、ヘミセルロースを分解する能力を持っており、これを通じてエタノールなどのバイオ燃料、生物由来の化学物質、生物製品の製造が可能です。

糸状菌・担子菌の代表的な菌種

❶トリコデルマ属 (Trichoderma)

糸状菌の一種で特にT. reesei(トリコデルマ・リーゼイ)が有名で、セルラーゼの生産が盛んです。この菌はセルロースの効果的な分解を行い、バイオエネルギーの製造に広く使用されています。

❷セレナ属 (Cerrena)

ミダレアミタケ(C. unicolor)などの種があり、リグニンを選択的に分解する力があります。これにより、バイオマスの糖化プロセスが劇的に効率化されます。

❸フラムリナ属 (Flammulina)

エノキタケ(F. velutipes)がバイオエタノール産生菌として活用されます。この菌は特に温度条件によって活性が異なり、低温での糖化に適しています。

❹コプリヌス属 (Coprinus)

牛の排泄物に生えるキノコとして見出された腐生担子菌Coprinus cinereusが糖化菌としてバイオマス処理に用いられます。また近縁種にササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)がありますが、こちらは主に美味な食用キノコとして、またエルゴチオネインなどの希少機能性成分を含むキノコとして知られています。

糖化酵素の機構

担子菌は糖化酵素としてカタラーゼやヘミセルラーゼ、リグニン分解酵素を生産します。これにより、複雑なポリマーが単糖に分解され、発酵の前段階として重要な役割を果たします。糖化工程では、糖化酵素を添加した後、温度とpHを調整して反応を促進させることが一般的です。

産業応用の現状と展望

最近の研究では、「糖化発酵同時進行(CBP)」技術が注目されており、これは糖化と発酵を同時に行うシステムです。このプロセスは、エタノールの生産を効率的かつコスト効果的にするため、糖化酵素を含む担子菌を利用しています。

このように、担子菌の糖化酵素は、バイオマス利用の新たな可能性を切り開く要素となっています。糖化酵素の製造技術として、バイオマス糖化酵素製造技術に関する詳細な研究も進んでいます。この技術は非可食バイオリファイナリーにおいても重要で、特に都市型バイオマスの活用が期待されています。具体的には、地域資源を活用して、様々なバイオマスから糖化酵素を効率良く生産する方法が模索されています。このような技術革新は、バイオ燃料の生産コストを低下させ、持続可能なエネルギー供給を実現するための重要なステップとされていま

さらに、これらの菌を用いた木質バイオマスの前処理法には、乾式粉砕や湿式粉砕、マイクロ波処理などが含まれ、更なる糖化効率の向上が図られています。特に、これらの前処理技術を組み合わせることで、糖化プロセスの全体的な効率が向上することが示されています。

参考:
柴田望ら「Trichoderma reesei を用いたバイオマス糖化酵素の開発」(応用糖質科学 vol.9 No.4 2019)
特表2008-538914『リグニン分解酵素の生産のための木材腐朽担子菌』
森澄子ら「デンプンを原料とした連結バイオプロセスにおけるエノキタケ Flammulina velutipes NBRC33210 のエタノール発酵能の評価」(Journal of Applied Glycoscience vol.56 No.4 2009)
吉田誠ら「腐生担子菌 Coprinus cinereus のセルロース分解時に発現が誘導される遺伝子」(木材保存 vol.34 No.6 2008)
農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)2012年ダイジェスト 『CIチーム:バイオマス変換要素技術の高度化(1)担子菌を利用した「糖化発酵同時進行CBP)」開発への挑戦』

酵母菌の糖化酵素を用いた産業利用

酵母の中にはエンド型糖化酵素を持ち、産業利用可能な種類がいくつか存在します。以下に詳細を説明します。

エンド型糖化酵素とは

エンド型糖化酵素(Endo-type amylase)は、デンプンや他の多糖の糖同士の結合(α-1,4グリコシド結合)をランダムに加水分解し、短鎖のオリゴ糖やマルトースを生成する酵素です。代表的なものにはα-アミラーゼなどがあります。酵母の中には、これらの酵素を生産し、自らデンプンを利用できるものがあります。一方で多糖の結合を非還元性の『末端から』加水分解しグルコースやマルトースを生じさせる酵素をエキソ型糖化酵素(Exo-type amylase)と呼び、β-アミラーゼやグルコアミラーゼなどが該当します。

エンド型糖化酵素を持つ酵母の例と産業利用

Saccharomyces cerevisiae(パン酵母・醸造酵母)

通常のSaccharomyces cerevisiaeはデンプンを直接利用できませんが、遺伝子組み換えを行った特殊な菌株ではα-アミラーゼを分泌し、デンプンを発酵できるものがあります。遺伝子組換え技術を用いることで、食品としては不適でもバイオエタノール産生などの工業的には利用する事ができるようになります。
(産業利用)
バイオエタノール生産:デンプン原料(トウモロコシ、ジャガイモ)から直接エタノールを発酵生産
酒造:米デンプンを直接分解し、発酵に利用

Kluyveromyces marxianus(乳糖発酵酵母)

Kluyveromyces属の酵母の中には、デンプン分解酵素(α-アミラーゼ)と相性が良いものがあります。特にKluyveromyces marxianusは、高温環境(40~45℃、株によっては50℃以上)でも成長可能であり、糖化酵素は40~50℃で活性が高くなるものが多いため、糖化酵素との組み合わせてバイオエタノールの生産速度が速い特徴があります。ラクトース(乳糖)を分解し発酵する菌としてケフィアや乳酒の製造でも知られています。
(産業利用)
バイオエタノール生産(デンプンを分解しながら発酵)
乳業・食品加工(乳糖分解と併用し、乳製品の発酵を最適化)

Scheffersomyces shehatae(デンプン分解酵母)

Scheffersomyces shehataeは土壌や昆虫の腸管から分離が報告されている酵母で、デンプンからのバイオエタノール一貫生産において有望な菌種とされています。
(産業利用)
デンプン系廃棄物の有効活用(食品残渣の糖化・発酵による資源化)
バイオエタノール生産(穀物以外のデンプン源も利用可能)

産業利用の利点

通常、デンプンを発酵させるにはアミラーゼを外部から添加する必要がありますが、これらの酵母を使えば酵素コストを削減できます。またプロセスの簡略化として、デンプン→糖化→発酵の工程を1ステップで実施できるため、エネルギーコストが低減します。また未利用資源の活用として食品残渣や農業廃棄物などのデンプンを有効利用できます。

今後の展望

糖化酵素を持つ酵母の開発・改良により、低コストで持続可能なバイオ燃料や食品加工のプロセスが実現できると期待されています。特に、遺伝子組換え技術を活用したSaccharomyces cerevisiaeの改良が進められており、実用化が進行中です。このように、糖化酵素を持つ酵母は食品・バイオ燃料など幅広い産業で活躍しており、今後の発展も期待されています。

参考:
近藤昭彦「細胞表層工学技術の広範な展開と合成生物工学の開拓によるバイオ燃料・グリーン化学品生産のための細胞工場の創製―バイオリファイナリーの構築を目指して―」(生物工学会誌 vol.89 No.4 2011)
島純ら「環境ストレス耐性に着目したバイオエタノール生産酵母開発の試み」(生物工学会誌 vol.89 No.9 2011)
龍谷大学、京都大学、科学技術振興機構(JST)平成27年3月30日プレスリリース「デンプンからバイオエタノールを一気通貫生産できる酵母を発見」
遠藤力也ら「Non-conventional yeasts:探索と産業利用への展開(後編)~新しい酵母はどこにでもいる~」(生物工学会誌 vol.94 No.6 2016)
(独)製品評価技術基盤機構「高温アルコール発酵酵母(Kluyveromyces marxianus DMKU3-1042)」
鈴木 俊宏「高温耐性酵母は主役になれるか?」(生物工学会誌 vol.93 No.9 2015)
(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)2017年12月「日本発の新技術により、東南アジアでのバイオエタノール生産拡大に貢献」
(独)農畜産業振興機構2017年1月10日記事「でん粉からバイオ燃料を作る」

まとめ:糖化菌がもたらす可能性と今後の展望

糖化菌は菌そのものであったり、またはその代謝産物、消化酵素などが食品、医薬品、エネルギーの分野で幅広く活用されており、その効果は多岐にわたります。特に健康食品やバイオマスの分解技術としての応用が期待されており、今後の研究によってさらなる可能性が広がるでしょう。
今後、糖化菌を活用した新たな技術や製品の開発が進むことで、健康維持や環境保全に貢献することが期待されます。


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