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乳酸菌がインフルエンザ予防に効果的な理由とは?ワクチンとの違いやアジュバント効果とインターフェロン産生誘導能について解説

「乳酸菌がインフルエンザの予防にどれだけ効果があるのか気になる。」 「ワクチンとアジュバントの違いって何?乳酸菌がそれらとどう関連しているのか知りたい。」 こうした疑問を抱いている方も多いかもしれません。実は、乳酸菌がインフルエンザ予防に有効だと言われている理由には、ウイルスを排除するインターフェロンという物質を免疫細胞に産生させるだけでなく、ワクチンの効果を高める、アジュバント効果により抗体価を高める事が大きく関わっています。これらのキーワードから乳酸菌がどのように免疫力を高めるのか、詳しく解説します。

乳酸菌がインフルエンザ予防に有効とされる理由とは?

乳酸菌は、腸内フローラのバランスを整えるだけでなく、免疫システムにも重要な影響を与えることが知られています。近年の研究では、乳酸菌がインフルエンザウイルスの感染予防に寄与する可能性が示唆されています。以下では、乳酸菌が免疫システムに与える影響と、インフルエンザウイルスの増殖を抑えるメカニズムについて詳しく説明します。

乳酸菌が免疫システムに与える影響

乳酸菌は、腸内に存在する善玉菌の一種であり、腸内環境を整えることで免疫機能を向上させる役割を果たします。腸は免疫系を維持するための重要な組織であり、腸内フローラのバランスが様々な異物に対する免疫応答に大きな影響を与えます。乳酸菌は、腸内の有害な病原菌の抑制や、免疫細胞の活性化を促進することが知られています。
具体的には、乳酸菌は腸内のパターン認識受容体(PRR)を介して免疫細胞を刺激し、サイトカインの産生を促進します。これにより、T細胞やB細胞の活性化が促され、体内の免疫応答が強化されます。特に、乳酸菌はインターフェロンや抗体の産生を促進し、ウイルス感染に対する防御機構を強化します。
また、乳酸菌の菌体外多糖などの成分は腸内のバリア機能だけでなく、肺の上皮細胞でもウイルスの感染を抑制する事で肺の炎症(肺炎)を防ぎます。それによりバリア機能の低下を向上させ、腸や肺の上皮細胞の結合(タイトジャンクション)を強化し、病原菌やウイルスの侵入を防ぐ役割を果たします。これにより、インフルエンザウイルスやそれに続く細菌による二次感染に対する抵抗力が高まると考えられています。

参考:
加地留美「乳酸菌の免疫調節作用に関わる細胞内シグナルとその制御」(化学と生物 vol.50 No.3 2012)
後藤俊幸ら「乳酸菌類のインターフェロン誘発能」(感染症学雑誌 vol.62 No.12 1988)
Meijiプレスリリース「R-1 EPSがインフルエンザ感染による病原体の侵入を防ぐ肺上皮バリア機能の損傷を抑制 細胞試験で確認 国際科学誌Letters in Applied Microbiologyにて論文発表」(KYODO NEWS PRWIRE 2024年4月23日記事)

インフルエンザウイルスの増殖を抑えるメカニズム

乳酸菌がインフルエンザウイルスの増殖を抑えるメカニズムについては、いくつかの研究が行われています。まず、ウイルスやウイルス感染細胞を排除するには、乳酸菌が産生する代謝産物よりも、乳酸菌の菌体成分(多糖、ペプチドグリカン、細胞質膜タンパク)が免疫細胞を活性化し役立つとされています。

さらに、乳酸菌はウイルス(インフルエンザウイルスやロタウイルスなど)に対する特異的な粘膜の抗体(IgA)の産生を促進することが報告されています。これにより、ウイルスが最初に体内に侵入した際に接触する、粘膜の段階で迅速に免疫応答が発動し、ウイルスの増殖を抑えることが可能になります。特に、乳酸菌の中でも特定の株がインフルエンザウイルスに対して強い効果を示すことが研究で明らかになっています。

また、乳酸菌は腸内の免疫細胞を活性化し、インフルエンザウイルスに対する自然免疫を強化することも示されています。自然免疫は、ウイルス感染に対する初期の防御機構であり、乳酸菌がこの機構を強化することで、インフルエンザウイルスの感染を防ぐ効果が期待されます。

参考:
保井久子「発酵乳プロバイオティクスの免疫調節機能およびウイルス感染症予防作用」(Milk Science vol.59 No.3 2010)
牧野聖也「Lactobacillus delbreueckii ssp. Bulgaricus OLL1073R-1で発酵したヨーグルトおよび産生多糖類の免疫賦活効果 」(Milk Science vol.58 No.2 2009)

乳酸菌とワクチンの違いとは?インフルエンザ対策としての役割

乳酸菌は、主に腸内で働く善玉菌であり、消化を助けたり、腸内環境を整えたりする役割を持っています。一方、ワクチンは特定の病原体に対する免疫を獲得するために使用される医薬品で、感染症の予防を目的としています。ワクチンは、病原体の一部または不活化された病原体を体内に導入することで、病原性を示す事なく免疫系を刺激し、病原菌に対する抗体を生成させます。インフルエンザウイルスに対する予防策としては、現在ワクチン接種が最も効果的です。インフルエンザワクチンは、毎年流行が予測される特定の株(亜型)ごとのワクチンが製造されており、ウイルスの亜型に対する免疫を誘導し、感染後の重症化を防ぐことができます。乳酸菌も免疫系に影響を与えることが知られており、特に腸内環境を整えることで、全体的な免疫力の底上げをさせる可能性があります。

ワクチンの基本的な仕組みと免疫への影響

ワクチンは、体内に免疫細胞が認識しやすい病原体の一部(抗原)などを導入することで、免疫系を活性化します。これにより、B細胞が病原体に対する抗体を生成し、ウイルスを中和するだけでなく、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)が抗体を介して感染細胞を攻撃する準備を整えます。ワクチン接種後、体内には記憶細胞が形成され、再度同じ病原体に感染した際に迅速に反応できるようになります。この仕組みにより、ワクチンは感染症の予防に寄与します。

参考:
高濱正吉「免疫老化を考慮した次世代型インフルエンザワクチン開発の基盤構築」

(科学研究費助成事業 研究成果報告書 令和5年6月9日)

 乳酸菌とワクチンの併用による相乗効果

最近の研究では、乳酸菌がワクチンの効果を高める可能性が示されています。例えば、OLL1073R-1株の乳酸菌を摂取することで、インフルエンザワクチンの効果が向上することが確認されています。乳酸菌は、腸内のマクロファージを活性化し、NK細胞を活性化するサイトカイン(IL-12)の分泌を促進し免疫応答を強化することで、ワクチンの効果を補完する役割を果たすと考えられています。さらに、乳酸菌を用いた経口ワクチンの研究も進められており、これにより新たなワクチン接種のアプローチが期待されています。
乳酸菌とワクチンの併用による相乗効果の具体例として、Lactobacillus casei IGM393株を用いた研究があります。この研究では、サルモネラ菌の菌体の一部を乳酸菌に組み込んだ遺伝子改変乳酸菌を投与して免疫への効果を調べた他、サルモネラ菌に対する経口ワクチンが乳酸菌と併用されることで、免疫応答が強化されることが確認されています。さらに、乳酸菌を用いた経口ワクチンは、特に粘膜免疫を誘導する能力が高く、これにより感染症の予防効果が期待されています。

参考:
株式会社明治プレスリリース2023年1月20日「OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取により、インフルエンザワクチンの効果の増強と、感冒症状の累積発生日数が減少することを確認~1月1日 国際科学誌Bioscience of Microbiota, Food and Healthにて論文発表~」
株式会社ヤクルトScience Report No.3 プロバイオティクスによる免疫調節作用

五十君靜信「遺伝子組換え食品の安全性に関する研究から生まれた乳酸菌経口粘膜ワクチンの開発」(日本乳酸菌学会誌 vol.32 No.1 2021)

アジュバント効果とは?乳酸菌がワクチンの効果を高めるメカニズム

アジュバントとは、ワクチンと一緒に投与され、その免疫原性を高めるために使用される物質のことを指します。アジュバントは、ラテン語の「助けるために」という意味を持つ「adjuvare」に由来し、免疫系を活性化を補助する役割を果たします。ワクチン単体では十分な免疫応答を引き起こさない場合、アジュバントを加えることで、より強力な免疫反応を誘導することが可能になります。

アジュバントとは?免疫賦活剤としての役割

アジュバントは、主に以下のようなメカニズムでウイルス免疫応答を強化します。

抗原の持続的な放出: アジュバントは、ワクチンに含まれるウイルス抗原が体内で長時間にわたり放出されるのを助け、免疫系がウイルス抗原に対して持続的に反応できるようにします。

免疫細胞の活性化: アジュバントは、マクロファージや樹状細胞などの自然免疫細胞を活性化し、これらの細胞がウイルス抗原などの認識能力を高め、適切な免疫応答を引き起こすのを助けます。これにより、ウイルス特異的な抗体の生成が促進されます。

サイトカインの分泌促進: アジュバントは、免疫細胞からサイトカインと呼ばれる免疫分子の分泌を促進し、これが他の免疫細胞を活性化させ、免疫応答を強化します。

参考:
東京大学医科学研究所感染・免疫部門ワクチン科学分野 石井健研究室「アジュバントとは」

乳酸菌のアジュバント効果が抗体価を高める仕組み

乳酸菌は、腸内フローラの一部として知られ、健康に多くの利点をもたらす微生物です。最近の研究では、乳酸菌がワクチンのアジュバントとしての効果を持つことが示されています。特に、OLL1073R-1という乳酸菌株が、インフルエンザワクチンの効果を高める可能性があることが報告されています。

乳酸菌がワクチンの効果を高めるメカニズムは、以下のように考えられています。

腸内免疫の活性化: 乳酸菌は腸内での免疫応答を活性化し、腸管関連リンパ組織(GALT)を刺激します。これにより、全身の免疫系が強化され、ワクチンに対する抗体の生成が促進されます。

抗原提示細胞の活性化: 乳酸菌は、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞を活性化し、これらの細胞がワクチンのウイルス抗原を効率的に提示することを助けます。これにより、T細胞やB細胞の活性化が促進され、特異的な抗体の生成が増加します。

サイトカインの分泌: 乳酸菌は、免疫系の細胞からのサイトカインの分泌を促進し、これが他の免疫細胞を引き寄せ、免疫応答を強化します。特に、IL-6やIL-12などのサイトカインが重要な役割を果たします。

腸内フローラのバランス調整: 乳酸菌は腸内フローラのバランスを整え、病原菌の増殖を抑制します。これにより、全体的な免疫力が向上し、ワクチンに対する反応が強化されると考えられています。

参考:
株式会社明治プレスリリース2023年1月20日「OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取により、インフルエンザワクチンの効果の増強と、感冒症状の累積発生日数が減少することを確認~1月1日 国際科学誌Bioscience of Microbiota, Food and Healthにて論文発表~」

乳酸菌が病原性ウイルスへの免疫を活性化させる仕組みとは?インターフェロン産生との関係

乳酸菌は、腸内フローラの一部として広く知られ、健康に多くの利点をもたらす微生物です。特に、免疫系に対する影響が注目されています。乳酸菌は、腸内の免疫細胞に直接作用し、免疫応答を調節することが示されています。これにより、感染症に対する抵抗力を高めるだけでなく、アレルギーや炎症性疾患の予防にも寄与します。

インターフェロンとは?ウイルス防御の重要な役割

インターフェロン(IFN)は、ウイルス感染に対する自然免疫の重要な要素です。特に、I型インターフェロン(IFN-αおよびIFN-β)は、ウイルス感染に対する初期防御反応において重要な役割を果たし、免疫細胞だけでなく線維芽細胞や血管内皮細胞でも産生されます。これらのインターフェロンは、感染した細胞から分泌され、周囲の細胞に抗ウイルス状態を誘導します。一方Ⅱ型インターフェロン(IFN-γ)は免疫細胞から主に産生され、免疫バランスの調整やⅠ型インターフェロンの効果を増強する作用があります。

乳酸菌は、インターフェロンの産生を促進することが知られています。例えば、特定の乳酸菌株は、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化し、これによりIFN-αの産生を促進します。このプロセスは、ウイルス感染時の免疫応答を強化するために重要です。

参考:
PDBj入門 今月の分子 128「インターフェロン」
日本政府広報VOL.198 November 2024「[日本の技術]免疫の司令塔細胞を活性化するプラズマ乳酸菌」

乳酸菌がインターフェロンの産生を促進するメカニズム

乳酸菌がインターフェロンの産生を促進するメカニズムは、いくつかの研究によって明らかにされています。例えば、乳酸菌がマウスモデルでのIFN-βの産生を誘導することが示されており、これによりウイルスに対する抵抗性が向上することが確認されています。さらに、乳酸菌の摂取が、腸内の免疫細胞の活性化を通じて、全身の免疫応答を強化することが示されています。また、乳酸菌は、腸内のマクロファージに対しても作用し、これによりIFN-γの産生を促進します。IFN-γは、細胞性免疫を強化し、感染に対する防御を高める重要なサイトカインです。

乳酸菌は、腸管内での存在を通じて、免疫系にさまざまな影響を与えます。具体的には、乳酸菌は腸内のM細胞を介して免疫細胞に取り込まれ、これが免疫応答を引き起こします。乳酸菌が腸内に到達すると、腸管免疫系の中心であるパイエル板に作用し、IgA抗体の産生を促進します。IgAは、腸内の病原体に対する防御に重要な役割を果たします。

さらに、乳酸菌は、腸内のマクロファージや樹状細胞に対しても影響を及ぼします。これらの免疫細胞は、乳酸菌の成分を認識し、サイトカインを分泌することで、全体的な免疫応答を強化します。近年の研究では、乳酸菌が産生する細胞外膜小胞表層のリポペプチドは、宿主の免疫細胞を活性化することが示されています。

参考:
碇菜穂「キッコーマンの乳酸菌研究~アシスト乳酸菌を送り出すまで~」(生物工学会誌 vol.100 No.4 2022)
藤原大介「ウイルス感染防御機能を司るプラズマサイトイド樹状細胞を活性化する乳酸菌の研究開発」(日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 vol.3 No.4 2023)

インフルエンザ予防に役立つ乳酸菌の種類と摂取方法

インフルエンザは毎年流行し、多くの人々に影響を与える感染症です。予防策としてワクチン接種が一般的であり最も有効な方法ですが、最近の研究では乳酸菌やビフィズス菌がインフルエンザ予防に役立つ可能性が示されています。ここでは、インフルエンザ予防に有効とされる乳酸菌やビフィズス菌の種類7選と、効率的な摂取方法について詳しく解説します。

インフルエンザ予防に有効とされる乳酸菌の種類7選

  • 1.Lactobacillus delbrueckii(ラクトバチラス・デルブルエッキー)

R-1乳酸菌として国内で良く知られている菌もこの種に属します。ヨーグルトで良く知られるブルガリア菌がこの種に属しており、様々な免疫への効果が報告されています。

2.Lactobacillus rhamnosus(ラクトバチルス・ラムノーサス)

    Lactobacillus rhamnosusは、日本ではLGG菌などが知られており免疫系を強化する効果があるとされる乳酸菌の一種です。研究によると、この菌は腸内フローラを改善し、免疫応答を促進することが示されています。特に、インフルエンザウイルスに対する抵抗力を高める効果があるとされています。

    3. Lactobacillus casei(ラクトバチルス・カゼイ)

    Lactobacillus caseiもまた、インフルエンザ予防に寄与する可能性がある乳酸菌です。この菌は、カゼイ菌シロタ株などが知られていますが、腸内の有害な病原菌を抑制し、免疫系を活性化する作用があります。特に、風邪やインフルエンザの症状を軽減する効果が報告されています。

    4.Bifidobacterium bifidum(ビフィドバクテリウム・ビフィダム)

    Bifidobacterium bifidumは、腸内環境を整えるだけでなく、免疫機能を向上させる効果があるとされています。この菌は、特に若年者においてインフルエンザウイルスに対する抵抗力を高めることが示されています。

    5.Lactobacillus plantarum(ラクトバチルス・プランタルム)

    Lactobacillus plantarumは、抗ウイルス作用を持つことが研究で示されています。この菌は、インフルエンザウイルスの複製を抑制する可能性があり、免疫系を強化することで感染症の予防に寄与することが期待されています。

    6.Lactobacillus acidophilus(ラクトバチルス・アシドフィルス)

    Lactobacillus acidophilusは、腸内の健康を保つために重要な乳酸菌であり、免疫系の強化にも寄与します。この菌は、腸内の有害な病原菌を抑制し、インフルエンザウイルスに対する抵抗力を高めることが示されています。特に、Lactobacillus acidophilusを含むプロバイオティクス製品が、インフルエンザの予防に効果的であるとする研究もあります。

    7. Bifidobacterium longum(ビフィドバクテリウム・ロンガム)

    Bifidobacterium longumは、腸内フローラのバランスを整えるだけでなく、免疫機能を向上させる効果があるとされています。この菌は、特にインフルエンザウイルスに対する免疫応答を強化することが示されており、高齢者の風邪やインフルエンザの予防に役立つ可能性があります。

    参考:
    Y. Yamamoto et al., “Effect of ingesting yogurt fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1 on influenza virus-bound salivary IgA in elderly residents of nursing homes: a randomized controlled trial” Acta Odontologica Scandinavica vol.77 No.7 2019)
    H. Zelaya et al., “Nasal priming with immunobiotic Lactobacillus rhamnosus modulates inflammation–coagulation interactions and reduces influenza virus-associated pulmonary damage” inflamm. Res. Vol. 64 2015
    H. Yasui et al., “Reduction of Influenza Virus Titer and Protection against Influenza Virus Infection in Infant Mice Fed Lactobacillus casei Shirota” Clinical and Vaccine Immunology Vol. 11, No. 4 2004)
    B. Langkamp-Henken et al., “Bifidobacterium bifidum R0071 results in a greater proportion of healthy days and a lower percentage of academically stressed students reporting a day of cold/flu: a randomised, double-blind, placebo-controlled study” British Journal of Nutrition vol. 113 2015
    N. Kechaou et al., “Identification of One Novel Candidate Probiotic Lactobacillus plantarum Strain Active against Influenza Virus Infection in Mice by a Large-Scale Screening” Applied and Environmental Microbiology Vol.79 No.5 2013
    G. Weiss et al., “Lactobacillus acidophilus induces virus immune defence genes in murine dendritic cells by a Toll‐like receptor‐2‐dependent mechanism” Immunology vol. 131 2010
    K. Namba et al., “Effects of Bifidobacterium longum BB536 Administration on Influenza Infection, Influenza Vaccine Antibody Titer, and Cell-Mediated Immunity in the Elderly” Biosci. Biotechnol. Biochem., vol. 74 No. 5 2010

    乳酸菌を効率的に摂取するためのポイント

    1. 発酵食品の摂取

    乳酸菌を効率的に摂取するためには、発酵食品を積極的に取り入れることが重要です。ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌などの発酵食品には、さまざまな種類の乳酸菌が含まれています。ただインフルエンザ予防を目的とする場合、プロバイオティクスとして知られインフルエンザ予防のエビデンスのある乳酸菌株が含まれている発酵食品を選ぶことが推奨されます。

    2. サプリメントの利用

    乳酸菌を手軽に摂取する方法として、サプリメントの利用も考えられます。特に、特定の乳酸菌株が含まれているサプリメントを選ぶことで、インフルエンザ予防に効果的な摂取が可能です。サプリメントを選ぶ際は、品質や安全管理の公表をしている製品を選ぶことが重要です。

    3. 定期的な摂取

    乳酸菌の効果を実感するためには、定期的な摂取が必要です。腸内フローラのバランスを保つためには、毎日一定量の乳酸菌を摂取することが望ましいとされています。特にインフルエンザの予防を行いたい場合、インフルエンザが流行する2~3カ月前から意識的に乳酸菌を摂取することが推奨されます。

    4. バランスの取れた食事

    乳酸菌の効果を最大限に引き出すためには、バランスの取れた食事が不可欠です。ビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含む食材を摂取することで、腸内環境を整え、乳酸菌の働きをサポートします。特に、野菜や果物、全粒穀物を意識的に摂取することが重要です。

    5. ストレス管理

    ストレスは免疫機能に悪影響を及ぼすことが知られています。乳酸菌の効果を最大限に引き出すためには、ストレスを適切に管理することも重要です。リラクゼーション法や適度な運動を取り入れることで、ストレスを軽減し、免疫力を高めることができます。

    乳酸菌を活用したインフルエンザ予防の最新研究

    近年、乳酸菌がインフルエンザウイルスに対する予防効果を持つ可能性が注目されています。乳酸菌Lactococcus lactis Plasma(プラズマ乳酸菌)が自然免疫を誘導し、インフルエンザや新型コロナウイルスに対する防御機能を強化することが示されていますが、キリンホールディングスと国立感染症研究所の共同研究によると、プラズマ乳酸菌を経鼻的に投与することで、自然免疫応答が誘導され、感染予防効果が期待されることが明らかになりました。

    最新の研究が示す乳酸菌のインフルエンザ予防効果

    具体的には、プラズマ乳酸菌が免疫系の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化し、免疫細胞全体の機能を向上させることが報告されています。この活性化により、インフルエンザウイルスに対する抵抗力が高まるとされています。さらに、プラズマ乳酸菌を摂取するのではなく、経鼻的に接種する事が、インフルエンザウイルス感染のリスクを低下させる可能性が示唆されています。

    プラズマ乳酸菌の経鼻接種による自然免疫応答の誘導は、特に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やインフルエンザウイルスに対する感染防御において重要な役割を果たすことが示されています。研究によると、プラズマ乳酸菌の接種後、鼻腔細胞内でのpDCの発生割合が増加し、抗ウイルス遺伝子の発現も促進されることが確認されています。これにより、ウイルスの増殖を抑制する効果が期待されます。

    さらに、プラズマ乳酸菌の経鼻接種は、ウイルス感染の前に行うことで、感染後のウイルスRNA量を有意に減少させることが報告されています。この効果は、接種後2週間にわたって持続することが観察されており、自然免疫メモリーの誘導の可能性も示唆されています。

    参考:
    キリンホールディングスニュースリリース2024年11月18日「「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種によって新型コロナウイルスおよびインフルエンザウイルスへの増殖抑制効果を確認~鼻腔粘膜細胞の自然免疫応答の増強を確認~」

    今後の展望

    今後の研究では、乳酸菌を用いたワクチン開発が進むと考えられています。特に、呼吸器ウイルス感染を予防するための新しいアプローチとして、乳酸菌を利用した自然免疫誘導型ワクチンの開発が期待されています。また、乳酸菌の効果を最大限に引き出すための摂取方法や、他の免疫調節因子との相互作用についても研究が進められるでしょう。

    このように、乳酸菌はインフルエンザ予防において重要な役割を果たす可能性があり、今後の研究によってそのメカニズムや効果がさらに明らかになることが期待されます。


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