研究開発コラム
機能性食品原料

乳酸菌で免疫力アップ!ストレスや体温低下に負けない体づくり5ステップ

最近、体調を崩しやすくなった気がする…免疫力を高める方法ってあるのかな?ストレスや寒さで体温が下がると免疫力も落ちるって聞くけど、何か対策はないの? そう思う方もいるかもしれません。 実は、乳酸菌は継続的に体に取り入れることで免疫力をアップさせる効果が期待できます。乳酸菌は腸内環境を整えるだけでなく、ストレスや体温低下による免疫力の低下を防ぐ働きも持っています。この記事では、まずは免疫力とは何かを概説し、乳酸菌が免疫力を高めるメカニズムや、免疫力に影響する外的・内的な要因、乳酸菌と相性の良い免疫力を上げる食品、逆に免疫力を下げやすい食品などを紹介し、免疫力を維持するための生活習慣と体作りについて解説します。

乳酸菌が免疫力を高める理由とは?

乳酸菌は腸内に生息する善玉菌の一種であり、腸内環境を整える重要な役割を果たしています。腸内環境が整うことで、全身の免疫細胞の約70%が存在するとされる腸の健康が維持され、体全体の免疫機能が向上します。乳酸菌が作る乳酸は腸内を酸性に保ち、物理・化学バリア機能を高め有害な細菌の増殖を抑制します。この酸性環境は、腸内の善玉菌が増殖しやすくなるため、腸内フローラのバランスが改善され微生物学的バリア機能の向上に役立ちます。

免疫力とは?

「免疫力」とはそもそも何でしょうか?一般的な認識では感染症などの病気にかかりにくくする力、と捉える方も多いでしょう。正確には「自己」と「非自己」を認識し、「非自己」をウイルスや病原菌、がん化した細胞や感染細胞、古くなった細胞など体内から排除すべきもの、または食物として体内に取り込むべき栄養素に区別しそれぞれに適した生体内反応を行う力と言えるでしょう。つまり栄養は取込み、外敵や不要な自己細胞は排除する力です。免疫バランスが崩れ栄養や健康な自己細胞も外敵と捉え排除しようとすると食物アレルギーや自己免疫疾患になります。従って免疫力とは外敵を排除するだけでなく、外敵とそれ以外と正しく認識し、排除する力とも言え、さらに単純に免疫細胞のみが免疫を担当するものではない事を知る必要があります。特に乳酸菌が関わる腸管「粘膜」には様々な免疫システムが働いています。免疫細胞以外の免疫システムとして主には「物理バリア」と「化学バリア」、「微生物学的バリア」システムに分けられます。物理バリアは病原菌などが体内に侵入できないように上皮細胞同士がぴったりと接着するタイトジャンクションや杯細胞(さかずきさいぼう)が分泌する糖たんぱく質(ムチン)によって物理的に異物が体内に入ってこれないようにする免疫システムです。また化学バリアは主には同じく腸上皮細胞の一種パネート細胞が分泌する抗菌ペプチド(抗生剤のように病原菌の構造を変化させ死滅させる物質)により外敵の侵入を防ぐ免疫システムです。そして微生物学的バリアは、粘膜に共生する常在細菌叢が宿主の代わりに異物を排除してくれる免疫システムを指します。乳酸菌は主には免疫細胞に働きかけ、免疫力を維持すると考えられていますが様々な研究から免疫細胞以外の上記の免疫システムにも有用な効果を示し、免疫力を維持するために役立っているのです。

参考:
鈴木卓弥「腸管タイトジャンクションバリアの重要性と食品成分による制御」(ミルクサイエンス 69(3) 2020)
奥村龍「粘膜バリアによる腸内細菌と腸管上皮の分離」(生化学 89(5) 2017)
中村公則「抗菌ペプチドα-ディフェンシンによる腸内細菌叢の制御」(腸内細菌学雑誌 33  2019)

乳酸菌が腸内環境に与える影響(微生物学的バリア機能の向上)

腸内細菌のバランスが崩れると、悪玉菌が増加し、腸内環境が悪化します。これにより、腸の生物学的バリア機能が弱まり、ウイルスや病原菌が侵入しやすくなります。乳酸菌を積極的に摂取することで、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の活動を抑制できるため、感染症や炎症を防ぐ効果が期待できます。実際に腸炎を起こす病原菌カンピロバクター(Campylobacter jejuni)の増殖を乳酸菌が抑えたという報告があります。また抗生剤などの濫用により腸内常在細菌叢が乱れるとdysbiosisと呼ばれる菌叢バランスの崩壊によりサルモネラ菌やClostridium difficileの異常増殖や毒素産生に繋がる事が報告されており、「常在細菌叢」そのもののバリア機能が免疫にとって非常に重要であることが分かります。また抗生剤以外でも腸内細菌叢を乱す薬剤への効果として、LG21乳酸菌を用いた最近の臨床研究では、解熱剤と胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプ抑制剤)により減少した腸内細菌の多様性を緩和させる効果がある可能性が示されています。そのため臨床医療の現場でも、IBD(炎症性腸疾患)やUC(潰瘍性大腸炎)という難治性の腸の炎症患者に対し、乳酸菌等のプロバイオティクスの投与や健常便移植(FMT)といった研究が精力的に進められています。

さらに、乳酸菌は腸内の炎症を抑える作用も持っており、これは腸内環境の炎症を誘導するような細菌(病原性大腸菌やSFB:セグメント細菌、炎症を誘導する免疫細胞を活性化する細菌でマウスやラットに見られヒトでは存在しないが類似の細菌が存在する事が報告されている)の増加抑制などに寄与することが考えられます。これにより、アレルギーや自己免疫疾患のリスクが低下する可能性もあります。

このように、乳酸菌は腸内環境を整えることで、免疫バランスを崩させる病原菌の増殖を抑え、免疫バランスを整える細菌叢の形成に重要な役割を果たしています。

参考:
西山啓太ら「乳酸菌によるカンピロバクターの感染予防とその作用機序の解明に向けた研究」(畜産技術 2016年3月号)
株式会社明治 2024年7月24日プレスリリース「明治の乳酸菌Lactobacillus paragasseri OLL2716株の継続摂取が腸内細菌叢の変化を緩和する可能性を示唆」
MSDマニュアルプロフェッショナル版「感染に対する宿主の防御機構」
宮内栄治ら「腸内代謝物質を介した免疫系の修飾」(生化学 95(4)2023)
種本俊ら「腸内細菌叢と免疫の関わり」(日本臨床免疫学会会誌40(6)2017)
成田雅美「腸内細菌叢を標的としたアレルギー疾患発症予防」(アレルギー 69(1) 2020)

乳酸菌が物理バリア機能に与える影響

乳酸菌は腸内環境を整えるだけでなく、腸管粘膜における物理バリア機能の向上にも寄与することが研究によって示されています。特に、タイトジャンクションの強化に関してのメカニズムが注目されています。

タイトジャンクションは腸管上皮細胞間の接着構造であり、腸管の透過性を制御する重要な役割を果たしています。乳酸菌が腸管上皮細胞に作用することで、タイトジャンクションの構造が強化され、外来の有害物質や病原菌の侵入を防ぐことができます。例えば、明治グループの研究では、LB81乳酸菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus 2038株とStreptococcus thermophilus 1131株)が腸管バリアを強化する作用についての実験が行われ、乳酸菌の摂取がタイトジャンクションの強度を向上させることが確認されています。

これらの研究は、乳酸菌が腸管の物理バリア機能を向上させるメカニズムを解明することで、腸内環境の改善や関連疾患の予防に寄与する可能性を示唆しています。腸管バリア機能の強化は、特にリーキーガット症候群や炎症性腸疾患の予防において重要な要素となります。今後の研究により、乳酸菌の具体的な効果やそのメカニズムがさらに明らかになることが期待されます。

参考:
株式会社明治2022年11月16日プレスリリース「明治保有の乳酸菌が小腸上皮様細胞を用いたモデル系で 腸管バリア機能を強めることを確認」
宮内栄治ら「乳酸菌・ビフィズス菌による腸管炎症抑制」(化学と生物 46(9) 2008)
田中沙智「食品由来成分による免疫調節作用」(化学と生物 56(7) 2018)

乳酸菌が化学バリア機能に与える影響

腸管粘膜は、腸内環境を保護するための重要なバリア機能を持っています。このバリアは、主に腸上皮細胞によって形成され、特にパネート細胞が重要な役割を果たしています。パネート細胞は、抗菌ペプチドを分泌し、腸内の病原菌に対抗する化学的な防御を提供します。

パネート細胞は、小腸の陰窩に存在し、抗菌ペプチドであるαディフェンシン(病原菌を排除するが乳酸菌やビフィズス菌は排除しない)やカテリシジンを分泌します。これらのペプチドは、病原菌の細胞膜に作用し、その構造を変化させることで、病原菌を死滅させる効果があります。このように、パネート細胞は腸内の微生物バランスを維持し、病原菌の侵入を防ぐための第一線の防御機構として機能しています。

乳酸菌は、腸内フローラのバランスを整えるだけでなく、パネート細胞の機能をサポートすることが知られています。乳酸菌は腸内でのpHを低下させ、病原菌の増殖を抑制する環境を作り出します。また、乳酸菌が腸管内で増殖することで、パネート細胞の活性化を促進し、抗菌ペプチド(Regファミリー)の分泌を増加させることが示されています。

これにより、腸管の健康が維持され、全体的な免疫機能の向上にも寄与します。

参考:
日経BP 2022年1月5日記事「カオスな腸内細菌叢を新たな指標「αディフェンシン」で制御する」
明治ヨーグルトライブラリー「LB81乳酸菌の新たな可能性」

乳酸菌の腸管免疫細胞に対する影響

乳酸菌は腸内フローラの一部として、腸管免疫に重要な役割を果たしています。腸管免疫は、自然免疫と獲得免疫の両方を含む複雑なシステムであり、乳酸菌はこれらの免疫応答を調整する能力があります。

自然免疫細胞における乳酸菌の役割

自然免疫とは「自分」以外はすべて攻撃する免疫系を指し、これを非特異的(特定の対象を持たない)免疫といいます。体内にウイルスや病原菌などが侵入してきたときに真っ先に攻撃する細胞の事で、下記の細胞以外にも好中球などの顆粒球が含まれます。

マクロファージ

乳酸菌は自然免疫細胞の一種であるマクロファージの活性化に寄与します。具体的には、乳酸菌の菌体成分をマクロファージなど自然免疫細胞の表面に出ているTLR(Toll Like Receptor)と呼ばれる微生物成分受容体が認識し、マクロファージの異物貪食作用を促進します。乳酸菌が産生する代謝物質(乳酸やピルビン酸)は、マクロファージの機能を向上させ、病原性細菌などを取り込む能力が向上することが示されています。

プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)

プラズマサイトイド樹状細胞は、ウイルス感染に対する初期応答を担う重要な細胞です(※最近の研究ではpDCを後述の自然リンパ球(ILC)のグループに分類するという研究もあります)。乳酸菌は、pDC表面に発現する上述のTLRを通じて直接pDCを活性化し、インターフェロン(サイトカインの一種)の産生を促進することが報告されています。これにより、ウイルスに対する抵抗力が強化されます。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)

NK細胞は自然免疫細胞の一種で、腫瘍細胞やウイルス感染細胞を攻撃する役割を持っています(※現在は後述の自然リンパ球(ILC)のグループに分類されています)。乳酸菌は樹状細胞を活性化し、それによるサイトカイン(特定の免疫細胞の働きを制御する生理活性物質)の分泌誘導を通じてNK細胞の活性化を促進し、腫瘍細胞に対する免疫応答を強化することが示されています。特に、乳酸菌が産生する細胞外多糖(EPS)がNK細胞の機能を向上させることが研究で明らかになっています。

参考:
加地留美「乳酸菌の免疫調節作用に関わる細胞内シグナルとその制御」(化学と生物 50(3) 2012)
大阪大学 2019年1月24日プレスリリース「腸内細菌がつくる乳酸・ピルビン酸により免疫が活性化される仕組みを解明」
藤原大介「ウイルス感染防御機能を司るプラズマサイトイド樹状細胞を活性化する乳酸菌の研究開発」(日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 3(4) 2023)
竹田和由「身体を守る免疫の話: 乳酸菌と NK 細胞」(口咽科 34(1) 2021)
牧野聖也ら「免疫調節多糖体を産生する乳酸菌を活用した機能性ヨーグルトの開発」(化学と生物 53(10) 2015)

獲得免疫細胞における乳酸菌の影響

獲得免疫とはある程度高等な生物から現れる免疫系で、自然免疫と異なり明確なターゲットを記憶(抗原受容体を持ち認識)し攻撃する特異的免疫と言えます。主にはT細胞やB細胞などのリンパ球が該当します。

Th1, Th2, Treg細胞

獲得免疫では、T細胞が中心的な役割を果たします。乳酸菌は後述の細胞性免疫を誘導するTh1細胞と液性免疫を誘導するTh2細胞のバランスを調整し、免疫応答を適切に導くことが数多くの研究報告で実証されています。主には乳酸菌の細胞壁多糖とペプチドグリカンがマクロファージに取り込まれ活性化させる事でTh1細胞を活性化するIL-12というサイトカインの分泌を誘導する事でTh1/Th2バランスを整えると考えられます。特に最近の研究では、通常は酪酸産生菌などで分化誘導される、炎症反応を抑制するT細胞であるTreg細胞が一部の乳酸菌で分化誘導されることが報告され、自己免疫疾患のリスクを低下させる可能性があると言われています。

参考:
志田寛「Lactobacillus casei YIT 9029 (乳酸菌シロタ株) のアレルギー抑制効果: 作用機序と臨床応用への可能性」(日本乳酸菌学会誌 21(2) 2010)
三好雅也「乳酸菌の免疫機能調節に関する研究」(ミルクサイエンス 69(3) 2020)

細胞性免疫と液性免疫

免疫細胞の攻撃方法は細胞が直接異物を貪食したり破壊する細胞性免疫(Th1が司令塔)と、抗体に代表される異物にくっつき貪食細胞が食べやすくしたり毒素を中和する液性免疫(Th2が司令塔)に分けられます。

細胞性免疫(CTL)

細胞性免疫は、細胞傷害性T細胞(CTL)が主役となり、感染細胞や腫瘍細胞を直接攻撃します。乳酸菌はCTLの活性化を促進し、特にウイルス感染に対する防御を強化することが示されています。

液性免疫

液性免疫は、抗体の産生を通じて病原体を中和します。乳酸菌は、口腔や腸管粘膜内でのsIgAの産生を促進し、腸内の病原体に対する防御を強化します。sIgAは腸内の免疫バリアとして機能し、感染を防ぐ重要な役割を果たします。

参考:
特開2017-81838「抗原に対する特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)及び抗体産生を増強させる方法」
花岡裕吉ら「MG2809 乳酸菌の摂取が大学ラグビー選手の口腔内免疫能に及ぼす影響」(体力化学 64(3) 2015)

自然リンパ球(ILC)と乳酸菌

最近の研究では、自然リンパ球(ILC)が新たな免疫細胞群として注目されています。ILCは、自然免疫の一部として、感染や炎症に対する迅速な応答を行います。日本ではまだ研究が少ないですが、海外の研究例では乳酸菌は3型ILCのバランスを調整し脳腸相関によるうつ症状などの改善活にも寄与する可能性が示唆されています。

参考:
Susan Westfall et al., Chronic Stress Induced Depression and Anxiety Priming Modulated by Gut Brain Axis Immunity. Front Immunol. 2021 Jun 24:12

まとめ

乳酸菌は腸管免疫において多様な免疫バリア機能、免疫細胞に影響を与え、自然免疫と獲得免疫の両方を調整する重要な役割を果たしています。これにより、腸内の健康を維持し、感染症や自己免疫疾患のリスクを低下させる可能性があります。ただし乳酸菌株毎に様々なデータが出ているため、実際に自分に合う乳酸菌を色々と試してみる事が良いでしょう。今後の研究により、乳酸菌の具体的なメカニズムやその応用がさらに明らかになることが期待されます。

乳酸菌で免疫力アップを目指す5ステップ

乳酸菌が免疫力を上げるのに役立てるためには、乳酸菌が十分に働ける環境を作る事が大事になります。ここでは食生活で気を付ける事を中心に、免疫力を低下させない体づくりのための5つのステップを解説します。

朝食と夕食にヨーグルトを取り入れる

乳酸菌を手軽に摂取できる方法の1つがヨーグルトを毎日の食事に取り入れることです。特に朝食にヨーグルトを摂ることで腸の働きを活発にし、1日のスタートを健康的に切ることができます。プレーンヨーグルトにハチミツやフルーツを加えると、糖分を過剰に摂らずに乳酸菌と一緒にビタミンやミネラルも補給できるため、より効果的です。また免疫細胞は就寝時に最も活発に働きます。そのため夕食にもヨーグルトを摂り入れ、乳酸菌が就寝時に腸内で十分働ける環境を整えましょう。ただしヨーグルトの「乳成分」は後述の「身体を冷やす食品」に分類されるため、摂りすぎると体を冷やしやすくなり免疫が働きにくくなります。また乳糖不耐症など乳成分が合わない方は、豆乳ヨーグルトや後述の乳酸菌が含まれる発酵食品を試してみましょう。

 色々な発酵食品を積極的に摂る

乳酸菌はヨーグルト以外にも漬物やキムチ、味噌、納豆などの発酵食品に多く含まれています。これらを日々の食事に取り入れることで、さまざまな種類の乳酸菌を摂取できます。免疫の維持には腸内にさまざまな菌株の「多様性」がある事が良いとされています。そのためヨーグルトだけでなく、多種多様な発酵食品の摂取は腸内細菌叢の多様性を高めるため、免疫力向上に役立つと考えられます。

免疫力を下げる食品の摂取をできるだけ控える

免疫力は、体が外部からの病原体や異物に対して適切に反応し、健康を維持するために重要な要素です。免疫力が高い状態とは、必要な時に必要なだけ免疫が適切に働くことを指しますが、逆に免疫力が低下すると、外敵を排除できないだけでなく、慢性的な炎症を引き起こすこともあります。ここでは、免疫力を下げる食品の具体例について詳しく見ていきます。

過剰な鉄分を含む食品

過剰な鉄分は、体内で活性酸素を生成し、免疫力を低下させる要因となります。特に、慢性的な肝炎を抱える人々は、抗炎症作用があるとされるウコンやしじみを摂取することが多いですが、これらの食品は鉄分を多く含んでいます。過剰に摂取すると、逆に鉄により発生する活性酸素により炎症を増悪させる可能性があります。最近よく耳にする非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)においても鉄分の過剰を注意すべきとの報告があります。鉄分の摂取目安量を確認し、適切な量を守ることが重要です。例えば、成人男性の鉄分の推奨摂取量は1日あたり7mg、成人女性は10mgとされていますが、これを超えると特に肝炎のある方などは免疫力・健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

肥満を引き起こしやすい食品

肥満は、脂肪組織の肥大を引き起こし、これが慢性炎症を引き起こす原因となります。特に、ファストフードなどの「超加工食品」と呼ばれる食品や高カロリーな食品は肥満を助長し、結果として免疫力を低下させることがあります。肥満に伴う慢性炎症は、免疫系の過剰な反応を引き起こし、アレルギーや自己免疫疾患のリスクを高めることが知られています。したがって、肥満を防ぐためには、これらの食品の摂りすぎに注意しバランスの取れた食事と適度な運動が不可欠です。

体温を下げる食品

体温を下げる食品、特に冷たい飲み物や生野菜などは、体を冷やす作用があります。特に夏場にこれらの食品を過剰に摂取すると、体温が下がり、免疫力が低下する可能性があります。体温が低下すると、免疫系の機能が低下し、感染症にかかりやすくなることがあるため、注意が必要です。体を温める食品、例えば生姜(ショウガ)や味噌などの発酵食品などを意識的に摂取することが推奨されます。

精製された糖分を多く含む食品

精製された糖分は、免疫系に悪影響を及ぼすことが知られています。最近の研究では果糖(フルクトース)を多く含む食品は、腸のバリア機能を低下させ、毒素などが体内に入りやすくなり炎症を引き起こし、免疫力が低下する可能性があります。特に、果糖(工業的に作られる果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖含む)を多く含む飲料やお菓子は、過剰摂取を避けるべきです。研究によると、砂糖の摂取が多い人は、感染症にかかりやすい傾向があることが示されています。

トランス脂肪酸を含む食品

トランス脂肪酸は、免疫系に対して有害な影響を及ぼすことが知られています。免疫の維持にはEPAやDHAなどの必須脂肪酸が欠かせませんが、トランス脂肪酸はこの必須脂肪酸を作る脂肪酸代謝経路を阻害し、アレルギー児では必須脂肪酸が低減している事が報告されています。これらは主にファストフードなどの超加工食品に含まれており、炎症を引き起こす原因となります。トランス脂肪酸の摂取は、心血管疾患や糖尿病のリスクを高めるだけでなく、免疫系の機能を低下させることが上記例などの研究で示されているため、トランス脂肪酸を過剰に含む食品の摂取はできるだけ控えるべきでしょう。

まとめ

免疫力を下げる食品には、過剰な鉄分、肥満を引き起こす食品、体温を下げる食品、精製された糖分、トランス脂肪酸などが含まれます。これらの食品を意識的に避け、バランスの取れた食事を心がけることで、免疫力を維持し、健康を保つことが可能です。特に、食品の栄養成分表示を確認し、適切な摂取量を守ることが重要です。健康的な食生活を送ることで、免疫力を高め、病気に対する抵抗力を強化することができます。

参考:
新真智「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態進展に関わる鉄過剰の役割」(日薬理誌 154(2) 2019)
小川佳宏「肥満と自然炎症」(日薬理誌 138  2011)
糖尿病ネットワーク2021年2月24日記事「果糖の摂り過ぎが糖尿病や肥満の原因に 新型コロナなど「感染症」を悪化させる原因にも」
角田和彦「専門医のためのアレルギー学講座 XVI.環境因子とアレルギートピックス 5.環境因子がアレルギーに及ぼす影響の可能性(小児科領域)」(アレルギー 64(1) 2015)

ストレスや低体温に注意する

ストレスは免疫系に悪影響を及ぼすことが知られています。ストレスがかかると、CRHというホルモンが脳内で作られこれが全身性に炎症を起こすため、それを抑えるために体内でコルチゾールというホルモンが分泌され、これが免疫機能を抑制します(免疫抑制剤で知られるステロイド薬はコルチゾールをもとに作られています)。長期的なストレスやPTSDなどは、逆に副腎が疲弊して血中のコルチゾール濃度が低下し炎症を起こしやすくなる、感染症にかかりやすくなるだけでなく、慢性疾患のリスクも高めることが示されています。

また最近の研究では精神的なストレスが小腸下部の共生細菌と宿主をつなぐ糖鎖(α1,2-フコース)を減少させる事も報告されています。従って乳酸菌の効果を高めるためにはストレスができるだけかからないようにする事が望ましいと考えられます。

また、低体温も免疫力に影響を与える要因です。体温が低下すると、精神的ストレスと同様に身体が「ストレス」を感じ、免疫細胞の活動が鈍くなり、感染症に対する抵抗力が低下します。特に、体温が35℃台になると、免疫機能が著しく低下することが報告されています。したがって、ストレスを軽減し、体温を適切に保つことが免疫力を高めるために重要です。

参考:
松林直「低コルチゾール血症をきたすストレス関連疾患とその鑑別」(心身医 63(5) 2023)
高山喜晴「精神的ストレス負荷による小腸フコシル化糖鎖の減少」(Trends in Glycoscience and Glycotechnology 33(192) 2021)
恩賜財団済生会 2021年1月28日記事「病気解説特集 免疫力低下のリスクも? 「低体温」にご注意!」

激しい運動を控え睡眠を十分に取る

運動は健康に良い影響を与える一方で、過度な運動は免疫力を低下させることがあります。特に激しい運動を長時間行うと、身体が「ストレス」を感じ、免疫系が抑制されることが研究で示されています。適度な運動は免疫力を高める一方で、過度な運動は逆効果になるため、バランスが重要です。

さらに、睡眠は免疫力にとって非常に重要です。睡眠中に体は修復され、免疫系が強化されます。十分な睡眠を取ることで、免疫細胞の生成が促進され、感染症に対する抵抗力が向上します。海外の研究によると、7時間未満の睡眠を取る人は、睡眠時間が短くなるにつれ風邪にかかるリスクが高まることが示されています。したがって、質の高い睡眠を確保することが免疫力を高めるために不可欠です。

参考:
利光孝之ら「ヨーグルトの摂取が大学生男子陸上選手の免疫機能に及ぼす影響-ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験」(体力科学 72(2) 2023)
大塚製薬 免疫Navi「適切な睡眠時間と免疫」

まとめ

免疫力とは自己と自己以外(非自己)をしっかり認識し、有害な非自己(病原菌やウイルス、がん細胞やウイルス感染細胞)を取り除き有益な非自己(腸内細菌など)と共生するシステムを維持する力の事です。乳酸菌は各種バリア機能から免疫細胞まで腸管粘膜免疫の各システムに有益な微生物であり、日常的に摂取する事が免疫の維持に役立つと言えます。乳酸菌の効果的な取り入れ方や、多様性を保つために様々な発酵食品を摂る事、免疫を低下させる食習慣をできるだけ控える事、免疫を低下させる食事以外の要因(ストレス、低体温、激しい運動、睡眠不足)も可能な限り改善できるよう生活習慣を改めてみる事で、乳酸菌の効果をより感じやすくなるでしょう。


一覧へ戻る

お問い合わせ・サンプル請求

当社研究・製品へのご質問・ご依頼、サンプル請求等、ご遠慮なくお問い合わせください。
担当者よりご対応いたします。