ピロリ菌を除菌したけれど、再発が心配…。乳酸菌がピロリ菌対策に効果的って聞くけど本当?胃酸過多や薬剤耐性にも関係があるの?そう思う方もいるかもしれません。 実は、乳酸菌はピロリ菌の除菌後のケアや再発予防に役立つことが研究で示されています。また、胃酸過多や薬剤耐性への対策としても注目されています。この記事では、乳酸菌がピロリ菌対策にどのように役立つのかを解説し、薬剤耐性や胃酸過多への影響についても詳しく検証していきます。
目次
乳酸菌は、ピロリ菌(Helicobacter pylori)に対してさまざまなメカニズムで働きかけることが知られています。ピロリ菌は胃の粘膜に定着し、慢性胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの原因となる細菌です。乳酸菌は、これらの病気の予防や治療において重要な役割を果たす可能性があります。
これらのメカニズムにより、乳酸菌はピロリ菌に対して有効な働きかけを行い、胃の健康を保つための要素となっています。
参考:
日経ドラッグインフォメーション「DIクイズ2:(A)ピロリ除菌でヨーグルトを薦める理由」(2016年3月10日記事)
神谷茂「Helicobacter pylori 感染症とプロバイオティクス」(日本細菌学雑誌62( 2 ):271–277,2007)
藤村茂「感染症に対するプロバイオティクスとバイオジェニックスの位置付けと今後の展望」(THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 71(6) 2018)
乳酸菌がピロリ菌に対して働きかけるメカニズムには、さらに以下のような付加的なメリットが期待できます。
これらの観点から、乳酸菌はピロリ菌除菌において有用な役割を果たす可能性が高いと考えられています。
参考:
日経ドラッグインフォメーション「DIクイズ2:(A)ピロリ除菌でヨーグルトを薦める理由」(2016年3月10日記事)
ピロリ菌は、慢性胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの原因となる細菌です。ピロリ菌感染があると、胃の粘膜に萎縮性変化が生じ、胃酸の分泌が低下することが知られています。この状態では、胃酸過多の症状は少なくなりますが、ピロリ菌を除菌すると、低下していた胃酸分泌が回復し、逆に胃酸過多の症状が現れることがあります。
ピロリ菌が感染していると、胃の粘膜が炎症を起こし、胃酸の分泌が抑制されます。しかし、薬剤による除菌治療後には、胃酸の分泌が正常範囲を超えて戻ることがあり、これが胃酸過多を引き起こす要因となります。特に、除菌後に胃の働きが不安定になることがあり、これが逆流性食道炎などの症状を引き起こすことがあります。
参考:
木下芳一「Helicobacter pylori感染陰性時代の消化管疾患」(日内会誌 106:7~9,2017)
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することによって引き起こされる炎症です。ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃の内壁に感染し、慢性胃炎や胃潰瘍を引き起こすことが知られています。興味深いことに、ピロリ菌が存在する場合、胃酸の分泌が抑制されることがあり、これにより逆流性食道炎の発症頻度が低下することがあります。
しかし、ピロリ菌を除菌すると、胃酸の分泌が回復し、逆流性食道炎の症状が現れることがあるとされています。実際、除菌後に約5%から10%の患者で逆流性食道炎の症状が悪化することが報告されています。これは、ピロリ菌によって抑えられていた胃酸分泌が復活するためです。
参考:
日本医事新報社 web医事新報 「ピロリ菌除菌が逆流性食道炎に与える影響」
機能性ディスペプシア(FD)は、胃の不快感や痛みを伴う症状で、消化器系の機能的な問題が原因とされています。ピロリ菌感染は、機能性ディスペプシアの発症に関与していることが示唆されています。除菌治療を行うことで、FDの症状が改善することがあるため、ピロリ菌の存在が重要な要因と考えられています。
また、機能性ディスペプシアの患者は、逆流性食道炎の症状を併発することが多く、これらの疾患は相互に影響し合うことがあります。特に、胃の運動機能が低下することで、胃酸の逆流が促進される可能性があります。
参考:
三輪洋人「機能性消化管障害の新時代」(日本消化器病学会雑誌 第117巻 第10号 2020年)
夙川内視鏡内科まえだクリニック「機能性ディスペプシアの症例写真と解説」
乳酸菌は腸内環境を整えるために重要な役割を果たします。乳酸菌の摂取は、消化器系の健康を改善し、逆流性食道炎や機能性ディスペプシアの症状を軽減する可能性があります。特に、乳酸菌が腸内の悪玉菌を抑制し、腸内フローラのバランスを整えることで、消化機能が向上することが期待されます。
さらに、乳酸菌の一部は、胃酸の分泌を調整する作用があるため、逆流性食道炎の症状を和らげる助けになることがあります。
このように、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、ピロリ菌、乳酸菌は相互に関連しており、消化器系の健康を維持するためには、これらの要因を総合的に考慮することが重要です。
ピロリ菌と逆流性食道炎の関係については、ピロリ菌が胃酸分泌を抑制することがあるため、逆流性食道炎のリスクが低下することがある一方で、除菌後には胃酸分泌が回復し、逆流性食道炎の症状が現れることがあるとされています。特に、ピロリ菌が胃の健康に与える影響は、胃がんのリスクとも関連しており、ピロリ菌感染がある場合、胃がんのリスクが10倍以上高まることが知られています。
機能性ディスペプシアに関しては、ピロリ菌の除菌が症状の改善に寄与することがあるため、ピロリ菌の存在が重要な要因とされています。機能性ディスペプシアの患者は、逆流性食道炎の症状を併発することが多く、これらの疾患は相互に影響し合うことがあります。特に、胃の運動機能が低下することで、胃酸の逆流が促進される可能性があります。
乳酸菌の役割については、腸内環境を整えるだけでなく、ピロリ菌の除菌後の胃酸分泌の調整にも寄与する可能性があります。また乳酸菌は腸内の悪玉菌を抑制し、腸内フローラのバランスを整えることで、消化機能を向上させることが期待されます。特に、乳酸菌の一部は、胃の痛みや不調に起因するストレスを緩和する作用があるため、逆流性食道炎の症状を和らげる助けになることが期待されます。ただし、乳酸菌の効果は個人差があり、症状が悪化する場合もあるため、注意が必要です。
参考:
明治乳業2023年3月30日プレスリリース「明治保有の乳酸菌OLL2716株の継続摂取による胃の痛みの改善と、胃の不調に起因するストレス軽減効果を確認」
明治ヨーグルトライブラリー「乳酸菌OLL2716株試験結果(FD:機能性ディスペプシア)」
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に生息する細菌であり、胃炎や胃潰瘍、さらには胃癌の原因の一つとされてきました。近年、ピロリ菌に対する除菌治療では、複数の抗生物質を併用する方法が一般的ですが、薬剤耐性を持つピロリ菌の増加が問題視されています。このような背景から、乳酸菌を用いた併用療法が注目されています。
ピロリ菌に対する抗生物質の使用は、胃酸抑制剤(プロトンポンプ阻害剤、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)と合わせ、通常クラリスロマイシン、アモキシシリン、メトロニダゾールなどの三剤または四剤併用療法が行われます。しかし、これらの抗生物質に対する耐性菌の出現が報告されており、特にクラリスロマイシンに対する耐性は顕著です。日本においても、クラリスロマイシン耐性のピロリ菌の割合は増加しており、クラリスロマイシンによる一次除菌成功率が低下しています。
参考:
古田隆久「本邦におけるHelicobacterpylori除菌治療の問題点」 (日本内科学会雑誌 110 巻 1 号 2021年)
厚生労働省健康・生活衛生局 感染症対策部 「薬剤耐性ピロリ菌」
乳酸菌は、腸内フローラのバランスを整えることで知られています。抗生物質治療中は、腸内の善玉菌が減少し、悪玉菌が増加することがありますが、乳酸菌を補助的に摂取することで、腸内環境を改善し、抗生物質の副作用を軽減することが期待されます。さらに、乳酸菌は免疫機能を強化する作用もあり、これによりピロリ菌に対する防御機能が向上する可能性があります。
乳酸菌を用いた併用療法は、ピロリ菌の除菌率を向上させる可能性があります。研究によると、乳酸菌がピロリ菌の活動を抑制することで、抗生物質の効果を高める作用が示されています。具体的には、乳酸菌が産生する代謝物質がピロリ菌の増殖を抑制し、抗生物質の効果を補完することが考えられています。
参考:
古賀泰裕ら「Helicobactor pylori抑制効果に優れたプロバイオティクスヨーグルトの 開発」 (日本農芸化学会誌 78(2) 2004)
薬剤耐性を持つピロリ菌に対しても、乳酸菌を活用した治療法が有効であると考えられています。乳酸菌は、免疫系を刺激し、体内の防御機能を強化することで、耐性菌に対する抵抗力を高める可能性があります。また、乳酸菌が腸内のバランスを整えることで、耐性菌の影響を軽減することも期待されます。
参考:
藤村茂「Helicobacter pylori 感染・治療・予防に関する検討」 (東北薬科大学研究誌 59 2012)
ピロリ菌に対する除菌治療において、薬剤耐性の増加は深刻な問題です。しかし、乳酸菌を用いた併用療法は、除菌率の向上や副作用の軽減、さらには免疫力の強化に寄与する可能性があります。今後の研究により、乳酸菌の具体的な効果やメカニズムが解明されることで、より効果的な治療法が確立されることが期待されます。
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に感染し、胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんのリスクを高めることで知られています。近年、乳酸菌がこのピロリ菌に対して効果を示す可能性があることが多くの研究で示されています。本項では、乳酸菌を活用したピロリ菌対策の効果的な取り入れ方と注意点について詳述します。
乳酸菌は、腸内環境を整えるだけでなく、免疫機能を高める作用も持っています。特に、LG21乳酸菌(Lactobacillus gasseri OLL2716株)は、胃酸に非常に強い耐性を持ち、ピロリ菌の抑制効果が期待されています。研究によると、LG21乳酸菌を含むヨーグルトを1日2個、12週間摂取した結果、ピロリ菌の数が減少したという報告があります。また、LG21乳酸菌は、ピロリ菌による炎症を抑える効果も示されています。
乳酸菌は、ピロリ菌除菌前だけでなく、除菌後の胃酸過多による症状緩和対策において有効な手段の一つです。特に、LG21乳酸菌を含むヨーグルトやサプリメントを日常的に摂取することで、ピロリ菌の抑制や腸内環境の改善が期待できます。しかし、適切な摂取量や医師との相談を忘れずに、継続的に取り入れることが重要です。これにより、健康的な胃の状態を維持し、ピロリ菌によるリスクを軽減することができるでしょう。
乳酸菌の効果を最大限に引き出すためには、特定の乳酸菌株の選択が重要です。例えば、LG21乳酸菌はピロリ菌に対する抑制効果が高いとされており、他にもラクトバチルス・ガセリ菌やビフィズス菌も有効とされています。これらの乳酸菌は、胃酸に強く、ピロリ菌の増殖を抑えるだけでなく、胃の炎症を和らげる効果も期待できます。
また、乳酸菌の摂取は、単にヨーグルトやサプリメントを食べるだけでなく、食事全体のバランスを考えることが重要です。食物繊維やオリゴ糖を含む食品を意識的に摂取することで、腸内の善玉菌を増やし、乳酸菌の効果を高めることができます。特に、野菜や果物、全粒穀物は、腸内環境を整えるために役立ちます。
さらに、ピロリ菌の除菌治療を受けている場合、乳酸菌の摂取が治療の副作用を軽減する可能性があることも研究で示されています。具体的には、LG21乳酸菌を併用することで、抗生物質による下痢や悪心などの副作用を軽減できることが報告されています。これにより、治療の継続が容易になり、ピロリ菌の除菌成功率が向上する可能性があります。
ただし、乳酸菌の効果には個人差があるため、効果を実感するまでには時間がかかることがあります。一般的には、数週間から数ヶ月の継続的な摂取が推奨されます。特に、ピロリ菌の検査で陽性となった場合は、医療機関での適切な治療と併せて乳酸菌を取り入れることが重要です。自己判断での過剰摂取は避け、医師の指導のもとで行うことが望ましいです。