多くの人が、「アレルギー体質を改善するには乳酸菌がいいって聞いたけど、飲料とサプリどちらを選べばいいの?」「乳酸菌って本当にアレルギーに効くの?」と思っているかもしれません。
実は、乳酸菌はアレルギー対策として注目されており、摂取方法によって効果が変わることがあります。
この記事では、アレルギーを軽減する乳酸菌の働きと、飲料とサプリのどちらが自分に合っているかを判断するポイントを詳しく解説します。
目次
アレルギー症状は、免疫システムが本来の働きを超えて過剰に反応することで起こります。アレルギーには様々な種類があり、大きく分けて下記のように4種類のアレルギーに分類されます。
Ⅰ型(即時型): 15 ~ 30分で発現。肥満細胞とIgEが関係。重症型はアナフィラキシーショックとなる。代表疾患は 蕁麻疹、花粉症、アトピー性皮膚炎、蕎麦・ナッツ・蜂毒アレルギー、喘息。
Ⅱ型(細胞障害型): 細胞抗原に対するIgGやIgM抗体反応による。代表疾患は天疱瘡・類天疱瘡、溶血性貧血、重症筋無力症。
Ⅲ型(免疫複合体型): IgG、IgMあるいはIgA抗体と抗原が結合した免疫複合体が組織に沈着し、補体を活性化し臓器障害が発生する。代表疾患は糸球体腎炎、SLE、悪性関節リウマチ、血管炎。
Ⅳ型(遅延型): 48時間が反応のピーク。感作Tリンパ球が主役でツベリクリン反応もこれに基づく。代表疾患は接触皮膚炎、薬疹、アトピー性皮膚炎。
花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーは、いずれもⅠ型アレルギーに分類される疾患であり、IgE抗体が関与する即時型のアレルギー反応を引き起こします。これらのアレルギーは、特定のアレルゲンが体内に侵入した際に迅速に免疫反応を引き起こし、様々な症状を引き起こします。例えば、花粉症ではくしゃみや鼻水、目のかゆみが、アトピー性皮膚炎では皮膚のかゆみや赤みが、食物アレルギーではじんましんや呼吸困難が見られます。
アレルギー症状は、免疫システムが本来の働きを超えて過剰に反応することで起こります。花粉症やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど、これらの症状に悩む人は多く存在します。このような中、乳酸菌がアレルギー対策として注目を集めています。
乳酸菌は腸内環境を整える働きを持ち、腸内で善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑えることが知られています。まず、乳酸菌は腸内フローラを整えることで、免疫系の機能をサポートします。腸は体内最大の免疫器官であり、免疫細胞の多くが腸内に存在しています。乳酸菌が腸内環境を改善することで、これらの免疫細胞が正常に機能し、活性化されることが示されています。ただし乳酸菌にも数多くの種類があり、どの乳酸菌でもアレルギーの症状緩和に有効だとは示されていません。きちんとしたデータを取得している乳酸菌を選ぶことが大切だと言えるでしょう。
参考:榎本雅夫ら「ヨーグルト・乳酸菌飲料摂取によるアレルギーの発症抑制―疫学調査からー」
乳酸菌の重要な働きの一つは、腸内で短鎖脂肪酸の一種である乳酸を生成することです。短鎖脂肪酸は腸内のpHを低下させることで悪玉菌の増殖を抑制し、善玉菌の活動を促進します。このようにして腸内フローラのバランスが保たれると、腸の健康が向上し、アレルギー症状や炎症性疾患のリスクが低下する可能性があります。しかし今までは乳酸が免疫細胞にどのように働くかはっきりと分かっていませんでしたが、近年大阪大学の竹田潔教授らの研究グループにより、乳酸などを野生型マウスに経口投与すると、小腸のマクロファージと呼ばれる免疫細胞は小腸の上皮細胞間から樹状突起を伸ばし、病原性細菌であるサルモネラ菌を効率よく取り込むことを見出しました。さらに乳酸などの投与により、野生型マウスはサルモネラ菌に対する免疫応答が増加し、サルモネラ菌への抵抗性が高まりました。このように乳酸菌が作る乳酸は、大腸内pHの低下による腸内細菌叢の改善から免疫バランスの改善に繋がるだけでなく、小腸の免疫細胞に直接作用しその活性化に役立つ事が分かってきたのです。
参考:AMEDプレスリリース「腸内細菌がつくる乳酸・ピルビン酸により免疫が活性化される仕組みを解明」
さらに、乳酸菌は免疫細胞の一種であるT細胞のバランスを調整する働きも持っています。T細胞は免疫反応を調節する重要な役割を果たしており、特にアレルギー体質の改善にはこのT細胞の調整が重要です。乳酸菌によってT細胞の機能が正常化されることで、過剰な免疫反応が抑制されると考えられています。
アレルギーに効く乳酸菌として特に注目されているのは、リフレクト乳酸菌(T-21株)です。この乳酸菌は、1990年に東京農業大学の岡田早苗教授によって発見され、長野県のツルコケモモから採取されました。リフレクト乳酸菌は、免疫細胞からインターロイキン-12という免疫調節物質の産生を促進する能力が高く、これにより花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を抑制する効果があることが実証されています。
具体的な研究結果として、リフレクト乳酸菌を含む食品を摂取した被験者は、花粉症に対して4週間、通年性鼻炎に対しては3週間で症状が緩和されることが確認されています。特に、鼻づまりやくしゃみ、鼻のかゆみといった症状が有意に改善されたことが報告されています。
この乳酸菌の作用メカニズムは、免疫系のバランスを整えることにあります。アレルギー反応は、主にTh2細胞と呼ばれる免疫細胞の過剰な反応によって引き起こされます。リフレクト乳酸菌は、このTh2細胞の活動を抑制し、アレルギーを引き起こすIgE抗体の生成を減少させることで、アレルギー症状を軽減します。また、Treg(制御性T細胞)を増加させることで免疫バランスを整え、過剰な反応を抑える役割も果たします。
他にも、ヤクルトが開発したラクトバチルス プランタルム(YIT 0132)も注目されています。この菌株は、IL-10というサイトカインの産生を促進し、免疫系の調整に寄与することが期待されています。これによりアレルギー症状の軽減が見込まれています。
さらに、雪印メグミルクの乳酸菌ヘルベ(L. helveticus SBT2171)も花粉やハウスダストによる不快感を緩和する機能があるとされており、臨床試験でその効果が確認されています。
これらの乳酸菌は、それぞれ異なるメカニズムでアレルギー症状に対抗する可能性があります。腸内環境を整えることで免疫系全体のバランスを改善し、アレルギー反応を抑えることが期待されています。今後もさらなる研究が進むことで、新たな治療法や予防策が見つかることが期待されます。
参考:
日清食品株式会社「リフレクト乳酸菌(T-21株)」
ヤクルト中央研究所 ヤクルト健康コラム「免疫③:乳酸菌がNK活性を回復させる?!(前編)」
雪印メグミルク「乳酸菌ヘルベヨーグルト(機能性表示食品 届出番号J171)」
飲料タイプの乳酸菌は、手軽に摂取できる健康食品として人気があります。以下にその特徴とアレルギー改善効果について詳しく説明します。
飲料タイプの乳酸菌は液体であるため、固形物よりも消化が早く、腸内に素早く届きます。この特性は、特に胃腸が弱い人や敏感な人、乳酸菌を初めて摂取する人にとって大きな利点です。液体の形状は、腸内フローラのバランスを整えるための効果的な手段となり、腸内環境を改善する助けとなります。
参考:(一社)全国発酵乳乳酸菌飲料協会「発酵乳・乳酸菌飲料の知識」
飲料タイプにはさまざまな乳酸菌株が含まれており、それぞれに独自の効果があります。例えば、花粉症の症状を和らげることが期待される乳酸菌株や、アトピー性皮膚炎の症状を軽減する株が存在します。具体的には、「ラクトバチルス プランタルム YIT 0132」という乳酸菌株は、スギ花粉症の症状を軽減する効果が確認されています。この株は、免疫系に働きかけることでアレルギー反応を抑制し、症状の緩和に寄与します。
参考:ヤクルト中央研究所 ヤクルト健康コラム「免疫③:乳酸菌がNK活性を回復させる?!(前編)」
飲料タイプはそのまま飲むだけで摂取できるため、乳酸菌初心者にも適しています。特に、ヨーグルトドリンクや発酵乳飲料は味や風味のバリエーションが豊富であり、日々の生活の中で楽しく続けやすいという利点があります。このような多様性は、飽きずに継続的に摂取することを可能にし、健康維持への意識を高める要因となります。
乳酸菌はアレルギー改善において重要な役割を果たすことが多くの研究で示されています。特に、免疫系のバランスを整えることで、アレルギー症状を軽減する効果が期待されています。具体的な前章で示した製品以外の乳酸菌飲料としては「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」を含有した乳酸菌飲料などがあります。
この乳酸菌株はTh1細胞を活性化し、Th2細胞とのバランスを改善することで、花粉症やアトピー性皮膚炎などの症状を緩和する効果があることが示されています。
参考:アサヒ飲料「PLUS(プラス)カルピス 免疫サポート(機能性表示食品 届出番号I741)」
この章ではサプリメントタイプの乳酸菌を摂取する際のポイントについて解説します。
サプリメントタイプの乳酸菌は、効率的に乳酸菌を摂取できる方法として注目されています。特に、忙しい日常生活の中で手軽に摂取できる点が大きなメリットです。カプセルや錠剤の形状で販売されており、持ち運びが簡単で保存もしやすいです。
サプリメントには特定の乳酸菌株が高濃度で含まれていることが多く、飲料タイプと比べて効果を実感しやすいとされています。例えば、キッコーマン社が開発したアシスト乳酸菌(Pediococcus acidilactici K15株)など特定の株を用いたサプリメントは、一日当たり500億個もの乳酸菌が摂取できる設計になっています。
さらに、耐酸性のカプセルが採用されている製品では、乳酸菌が胃酸の影響を受けずに腸まで届く仕組みが整っています。このため、乳酸菌の効果を最大限に引き出すことが可能です。耐酸性カプセルは、胃内での分解を防ぎ、生きたまま腸に到達させるため、より効果的な摂取方法とされています。
また、サプリメントには糖分や添加物が含まれていない製品も多く、健康志向の人々にとって理想的な選択肢と言えます。これにより、余分なカロリーや不必要な成分を避けながら、必要な栄養素を効率的に摂取することができます。
参考:(公財)腸内細菌学会 用語集「腸溶性カプセル(耐酸性製剤化)」
サプリメントタイプの乳酸菌は、アレルギー改善においても重要な役割を果たすことが多くの研究で示されています。特に、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状に対する効果が注目されています。
乳酸菌は腸内フローラを整えることで免疫機能を正常化し、アレルギー症状の軽減に寄与します。腸内には免疫細胞の約60%が集中しており、腸内環境が整うことで免疫反応が適切に調整されます。具体的には、乳酸菌が腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌を抑制することで、免疫系のバランスを保つことができます。
特に「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」や「ラクトコッカス・ラクティス T-21株」といった特定の乳酸菌株は、アレルギー症状に対する有効性が臨床試験で確認されています。例えば、L-92株は花粉症患者において、目や鼻のかゆみといった自覚症状の有意な改善を示しました。また、T-21株も花粉症や通年性鼻炎に対して効果を発揮し、鼻づまりやくしゃみの緩和が報告されています。
さらに、乳酸菌はアトピー性皮膚炎にも効果的であることが示されています。研究では、乳酸菌を含む発酵乳を摂取した子供たちにおいて、皮膚症状やかゆみが有意に軽減されたことが確認されています。
このように、サプリメントタイプの乳酸菌は、その手軽さ、高濃度含有、耐酸性カプセルによる効果的な摂取方法など、多くの利点があります。健康維持やアレルギー改善を目指す方々にとって、有力な選択肢となるでしょう。
参考:
渡邉映理ら「アレルギー疾患予防への新展開~プロバイオティクスの可能性」
キッコーマン「アシスト乳酸菌®」
飲料タイプとサプリメントタイプの乳酸菌の選び方について、以下のポイントを考慮することが重要です。
飲料タイプの乳酸菌は、手軽に摂取できるため、日常的な摂取に向いています。特に、ヨーグルトや乳酸菌飲料は、腸内環境の改善を目的とした継続的な摂取に適しています。これらの飲料は、乳酸菌が生きたまま腸に届くことが期待でき、消化を助け、有害菌の増殖を抑える効果があります。ただし、飲料タイプでは糖分やカロリーの内容にも注意が必要です。特に甘味料が多く含まれている製品は、健康面での影響を考慮する必要があります。
サプリメントタイプは、乳酸菌を効率的に補給できるため、特定のアレルギー症状の改善や健康効果を重視する人に適しています。サプリメントは、特定の乳酸菌株が含まれていることが多く、それぞれ異なる効果を持つため、自分の健康状態や目的に応じて選ぶことが望ましいと言えます。また、サプリメントでは添加物の有無や品質も確認することが重要です。特に、製品によっては不必要な添加物が含まれている場合もあるため、成分表示をよく確認することが求められます。
これらの要素を総合的に考慮することで、自分に最適な乳酸菌製品を見つけることができます。日常生活において乳酸菌を上手に取り入れ、健康維持や免疫力向上につなげていきましょう。
乳酸菌を日々の生活に取り入れるには、継続性が鍵となります。無理のない範囲で生活習慣に組み込むことが重要です。例えば、朝食時に乳酸菌飲料を飲む習慣を作ることで、自然に腸内環境を整えるサポートができます。また、仕事や勉強の合間に軽食としてヨーグルトを取り入れることで、健康的なリフレッシュを図ることができます。サプリメントを利用する場合は、飲み忘れを防ぐために決まったタイミングを設定すると良いでしょう。寝る前や食後など、自分の生活リズムに合った時間を選ぶことで習慣化が容易になります。
さらに、乳酸菌の摂取は単体ではなく、他の健康的な習慣と組み合わせることで相乗効果が期待できます。バランスの取れた食事や適度な運動を組み合わせることで、腸内環境の改善がさらに進みます。特に食物繊維を豊富に含む食品と一緒に乳酸菌を摂取すると、善玉菌の増殖を促進する効果が期待できるので、ぜひ試してみてください。
乳酸菌はアレルギー症状の改善に効果が期待される成分であり、飲料タイプとサプリメントタイプのどちらもそれぞれの特長を持っています。腸内環境を整えることがアレルギー対策の鍵となるため、自身の生活スタイルや目的に合わせた方法で乳酸菌を取り入れることが大切です。継続して乳酸菌を摂取することで、アレルギー症状の緩和や予防を目指し、より快適な日々を手に入れましょう。