研究開発コラム
機能性食品原料

βカロテンの効果とは?  効果的な摂取方法についても解説

近年、機能性表示食品制度が施行されたことにより、より一層健康を維持する食品に注目が集まっています。

実際に健康に関する様々な商品、キャンペーンを打ち出しつつ消費者の健康意識を刺激する企業も少なくありません。そのなかで、特に注目されているのがβカロテンです。

βカロテンは食事から十分に必要量が摂取可能であるため、日々の健康維持に役立つとされています。

そこで本記事ではβカロテンの基礎知識、効果について関係者向けに解説していきます。βカロテンに興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。

βカロテンとは

βカロテンは、特に緑黄色野菜に大量に含まれており、代表的なものとしてはカロテンという名前の元となった「にんじん(キャロット)」があります。βカロテンは食事で体内に取り込まれたあと、小腸上皮細胞で必要に応じてビタミンAに変わります。

そのため、βカロテンはプロビタミンA(ビタミンA前駆体)と呼ばれ、ビタミンAの仲間に分類されています。

参考:
カロテノイド | 公益社団法人 日本薬学会
ビタミンAの過剰摂取による影響 
ビタミンA – 「 健康食品 」の安全性・有効性情報

ここでは、まずβカロテンの変換先であるビタミンAについて詳しく解説します。

代表的なビタミンの種類

ビタミンは、人体の機能を正常に保つために必要な有機化合物です。身体の機能の調節をする潤滑油の役目を果たしますが、体内ではほとんど合成することができません

そのため、日頃から食物などで摂取する必要があります。ビタミンにはビタミンA、ビタミンB群(8種類)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの合計13種類があります。

ビタミンAとは?

ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称です。

ビタミンAの主要な成分であるレチノールには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。またレチノールは、ロドプシンと呼ばれる視細胞での光刺激反応に関与する物質の合成に必要であるため、薄暗いところで視力を保つ働きもあります。

ビタミンAになるカロテンにはα(アルファ)型、γ(ガンマ)型などがありますが、一番ビタミンAになる効果が高いものがβカロテンです。

参考:
カロテノイド | Linus Pauling Institute
ビタミンAの働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット

脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン

ビタミンには、油に溶ける脂溶性ビタミンと水に溶ける水溶性ビタミンがあります。

ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、他にビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが該当します。水溶性ビタミンはビタミンB群、ビタミンCです。

脂溶性ビタミンは水に溶けにくく、油脂やアルコールに溶ける性質があります。肝臓や脂肪細胞に蓄積され、体内で過剰になると頭痛や吐き気などを引き起こします。

一方、水溶性ビタミンは過剰に取った場合でも体内に蓄積されず体外に排出されます。逆に言えば体内に備蓄されないため、毎日一定量を摂取する必要があります。

参考:ビタミンの概要 – MSDマニュアル家庭版

βカロテンの効果

βカロテンはプロビタミンAの中でも特に効果が高いと言われています。ここでは、具体的にβカロテンの効果について4点紹介します。

抗酸化作用

βカロテンの変換先であるビタミンAは、強い抗酸化力を持っています。

日々私たちは生活する上で酸素を用いて活動していますが、その結果活性酸素と呼ばれる有害な老廃物が排出されています。この活性酸素による酸化はしみやしわ、老化にはじまり、がんや糖尿病、脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病の原因とされています。

しかしβカロテンには活性酸素による酸化を抑える「抗酸化作用」があり、摂取することで体の酸化を防ぎます

参考:抗酸化による老化防止の効果

動脈硬化予防

βカロテンには、動脈硬化予防の効果もあります。

活性酸素によって酸化された脂質(過酸化脂質)は老化にともなって蓄積され、動脈硬化を引き起こす原因の一つになるとされています。

しかし、βカロテンには抗酸化作用があることから、血中の過酸化脂質を減らし動脈硬化を予防する効果があるとされています。

参考:脳の機能とβ-カロテン、ビタミンEの関係

免疫機能正常化

βカロテンには、免疫機能を正常化する働きがあります。

免疫機能には自然免疫と獲得免疫があり、自然免疫は人間が生まれながら持っている異物を非特異的に認識し、排除する最初の免疫です。そして獲得免疫は一度侵入した病原体の情報を特異的に記憶し、再び侵入された時に一早く対処する免疫反応です。

βカロテンはどちらの免疫機能においても重要な役目を果たしており、自然免疫では各種細胞の感染症に対する粘膜バリアの維持に関わっています。

獲得免疫ではB細胞などの免疫細胞を正常に働かせる為の作用があり、体内の免疫機能を正常に動かすため必須とされています。

参考:免疫 | Linus Pauling Institute | Oregon State University

目の角膜を正常に保つ

βカロテンが半分近く変換されるビタミンAは、目の角膜を正常に保つ効果があります。

ビタミンAは、目の網膜で光を感じるために必要なタンパク質であるロドプシンの原料です。もしビタミンAが不足した際には、暗闇で視界が悪くなる夜盲症という症状になります。

また同時に、目の粘膜を潤したり、角膜の新陳代謝を促進したりするなどの効果があり、近年増加しているドライアイの対策のひとつとされています。

参考:
目の健康に注目:目の健康のための栄養素
にんじん 人参 産地 野菜 栄養 機能性 調理
レチナール分子1個の動的観察に成功:用語の説明

βカロテンの効果的な摂取方法

先述したとおり、ビタミンは日常的に摂取する際、食事で摂取する事が多くなります。ここではβカロテンの代表的な摂取方法を解説します。

βカロテン摂取に効果的な食材を選ぶ

βカロテンは、様々な緑黄色野菜に多く含まれています。特に多いものとしてしそやモロヘイヤなどがあります。

しかし、しそに関しては葉物野菜のため、量を多く摂取するにも限度があります。モロヘイヤも夏野菜のため、入手する機会が限られます。

そこで特にお勧めなのがニンジンです。ニンジンは一年中栽培されているため、いつでも入手できます。

ニンジンを約10g程度を目安に食べることで、1日に必要なβカロテンを摂取する事が可能です。

参考:
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書|厚生労働省
栄養成分別野菜ランキング
にんじん-月報 野菜情報-今月の野菜-2011年2月

食材を加熱調理する

βカロテンは加熱に強く炒め物などの加熱調理でも、含有量はほとんど減少しません。また、水にも溶けにくいため、煮込み料理などを作る際にも役立ちます。また加熱をすることでかさを減らせば、気軽に摂取しやすくなるでしょう。

なお、カロテンは脂溶性ビタミンであるため、油で加熱するとより一層吸収効率が高まります

参考:
緑黄色野菜 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
ビタミンについて – 「 健康食品 」の安全性・有効性情報
食品中ビタミンの調理損耗に関するレビュー(その 1) (脂溶性ビタミン

他の抗酸化物質と合わせて摂取する

βカロテンは活性酸素の発生を抑え、取り除く抗酸化作用があります。

同じような抗酸化作用があるビタミンとして、ビタミンCとビタミンEがあります。

ビタミンCやビタミンEを含む食品と摂取することで、相乗効果により抗酸化作用がアップします。

お勧めの食材はカボチャです。βカロテンも豊富に含まれているうえ、ビタミンCもビタミンEも同時に摂取する事が可能です。

参考:
抗酸化ビタミンによる脂質酸化反応の抑制
抗酸化による老化防止の効果 | 健康長寿ネット
野菜類/(かぼちゃ類)/西洋かぼちゃ/果実/生 – 01.一般成分表-無機質-ビタミン類

サプリメントで摂取する

βカロテンは、サプリメントで摂取することが可能です。実際にはβカロテンを含むビタミンAのサプリメントという形で市販されており、マルチビタミンの一部として含まれていることもあります。

しかし、βカロテンと異なりビタミンAは過剰摂取すると健康被害が起こる場合があります。

現在、平均的な日本人のビタミンAの摂取量はあまり不足していません。そのため、サプリメントでビタミンAを摂取する事により過剰摂取になってしまう場合もあります。

βカロテンを含んだビタミンAのサプリメントを摂取する際は、食品で摂取する分も含めて計算を行うことが重要です。

参考:
厚生労働省eJIM | ビタミンA[サプリメント・ビタミン・ミネラル – 医療者]
ビタミンA過剰 – MSDマニュアル家庭版
第 1 部 栄養素等摂取状況調査の結果

βカロテン摂取の注意点

食事からβカロテンの摂取は可能ですが、摂取する上ではいくつかの注意点があります。ここでは、βカロテン摂取の注意点について、解説していきます。

1日の摂取限度量を守る

βカロテンは必要な量だけ体内でビタミンAに変換されて残りは排泄されるため、βカロテンとしての限度量はありません。

しかし、変換後のビタミンAは脂溶性ビタミンであり体内に蓄積されるため、βカロテンでなくレバーなどに多く含まれるビタミンAを直接過剰摂取する事による悪影響が存在します。そのため、ビタミンAの摂取限度量は必ず守りましょう。

厚生労働省の発表によると、ビタミンAは成人男性のビタミン A の推定平均必要量は 600〜650 µgRAE/日、成人女性の場合は450〜500 µgRAE/日とされています。食品だけで限度量を超えるケースは少ないものの、サプリメントで必要以上に摂取しないよう呼びかける必要があります。

参考:日本人の食事摂取基準(2020 年版)

妊婦の摂取では過剰摂取に注意する

妊娠中もビタミンAは必須の栄養素です。しかし妊娠中、特に妊娠初期のビタミンAに過剰摂取をすると胎児に先天異常が起こる可能性があるため、摂取量には注意しましょう。

βカロテンは体内でビタミンAに変換されるものの、必要量以外は排出されます。過剰摂取が不安な場合、ビタミンAではなくβカロテンの形で摂取することが推奨されます。

参考:ビタミンA過剰 – MSDマニュアル家庭版

まとめ:βカロテンでビタミンAの効率的な摂取をサポートできる

ビタミンAは人間の健康のために必要な栄養素です。しかしサプリメントなどにより過剰摂取してしまうと健康被害が起こる可能性があることから、積極的に摂取することに不安を感じる方も少なくありません。

しかしβカロテンは体内で必要分のみビタミンAに変換され、余分な物は排出されるため過剰摂取の心配はほとんどありません。

食生活の変化によりビタミンAを含めたビタミン不足が深刻化する現在、緑黄色野菜に幅広く含まれるβカロテンの重要性はさらに高まっていくでしょう。


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