研究開発コラム

【早わかり】乳酸菌の驚きの効果 研究例や商品情報をもとに一挙紹介

「乳酸菌の効果について知りたい」「乳酸菌の効果は種類によって変わるのか」とお悩みの方は多いでしょう。

乳酸菌が健康の維持増進に役立つことはよく知られていますが、どのような根拠で効果が謳われているかは、あまり注目されていません。

そこでこの記事では、乳酸菌の効果と種類について詳しく解説します。また商品開発の際のポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

乳酸菌の基礎知識をおさらい

この章では、乳酸菌の基礎知識について解説します。

乳酸菌は善玉菌の1つ

乳酸菌とはブドウ糖などを分解して乳酸を生成する菌の総称であり、人間の体に良い効果をもたらすため善玉菌に分類されます。

チーズやヨーグルト、糠漬けなどの発酵食品は、乳酸菌が活動することで起こる「乳酸発酵」を利用して製造されており、多くの方にとって身近な存在です。

ビフィズス菌も善玉菌の1つですが乳酸菌とは異なります。酸素が無い環境を好み、乳酸だけでなく酢酸を生成するのが特徴です。

乳酸菌には多くの種類が存在する

乳酸菌には非常に多くの種類があり、代表的な種であるLactobacillus 属は、25属261種(2020年時点)のように分類されています。かつては4属しかありませんでしたが、遺伝子解析技術が進展するにつれて、より正確な分類が可能になりました。

乳酸発酵した際の風味や香りは、利用する菌によって異なります。たとえ同じ属に分類されていても、菌株によって発酵時の風味や得られる効果が変わるのが大きなポイントです。

参考:J.Zheng et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 70, 2782-2858 (2020)

乳酸菌の驚きの効果と研究例

この章では、乳酸菌を摂取することで得られる効果と、その根拠となる研究例を紹介します。

便秘や下痢の改善

乳酸菌の摂取で、便秘や下痢の改善効果が期待できます。

2010年に行われた研究では、下痢傾向のある被験者に乳酸菌飲料を4週間摂取する実験をおこなったところ、下記の結果が得られました。

  • ・対照群と比較して、排便回数が低下
  • ・対照群と比較して、便に含まれる水分量が低下し、便の硬さが正常になった

また2023年に行われたメタ解析(複数の臨床試験結果を統合し、有効性を判断する研究手法)の研究文献の結果からは、高齢者の便秘症状について下記の結論を得ています。

  • ・対照群と比較し、排便回数が増加
  • ・対照群と比較し、糞便中の乳酸菌数が増加

上記の研究例から、乳酸菌の摂取によって便秘や下痢の改善効果が見込まれるといえます。

参考:
Matsumoto K. et al., J. Biosci. Bioeng., 110, 547-552(2010)
Neeraja Recharla et al., Heliyon. 2023 Jul 14;9(7)

風邪やインフルエンザの予防

乳酸菌の摂取は、風邪やインフルエンザの予防に効果があるとする研究結果があります。

2015年に行われた研究では、健康な成人に乳酸菌(Lactococcus lactis ssp. lactis)を含むヨーグルトを10週間継続して摂取してもらったところ、下記のような結果が得られました。

  • ・対照群と比較すると、インフルエンザの罹患率が有意に低かった
  • ・対照群と比較して、インフルエンザなどで見られる、咳や熱っぽさなどの症状が軽減された
  • ・対照群と比較して、免疫機能に関わるIFN(インターフェロン:抗ウイルス作用を持つ生理活性物質)の活性が高まった

このことから、免疫細胞を刺激しIFNの分泌を誘導する活性効果を通じて、当該乳酸菌にはインフルエンザへの罹患抑止や症状の緩和効果が期待できます。

参考:Sugimura T. et al., Brit. J. Nutr., 114, 727-733(2015)

メンタルヘルス効果

乳酸菌にはメンタルヘルスへの効果が期待される研究があります。

2017年に行われた研究では、学業上でストレスを受けている男子大学生に乳酸菌(Lactobacillus gasseri)を4週間摂取してもらったところ、下記の結果が得られました。

  • ・対照群と比較すると、不安や憂鬱な気分が改善された
  • ・対照群と比較すると、睡眠の質が向上した
  • ・対照群と比較して、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制された

上記の結果から、実験で使用した乳酸菌を摂取することで、メンタルヘルス向上の効果が期待できます。

参考:Sawada D. et al., J. Funct. Foods, 31, 188-197(2017)

高血圧の発症リスク低下

乳酸菌の摂取により、高血圧症の発症リスクを低減できる効果が期待できます。

日本人の高齢者を対象に行った研究で、過去5年間の乳酸菌を含む発酵乳飲料の摂取状況と高血圧症の発症状況を調査したところ、下記の結果が得られました。

  • ・1週間に3回以上乳酸菌飲料を摂取していた高齢者は、摂取頻度が週に3回未満の高齢者に比べ、高血圧症の発症リスクが有意に低かった

この研究から、週に3回以上の乳酸菌飲料の摂取は、高血圧の発症リスクを低下させる効果があるといえます。

参考:Aoyagi Y. et al., Benef. Microbes, 8, 23-29(2017)

血清脂質の改善効果

乳酸菌を含む発酵乳を摂取することで、血液中の脂質異常を改善できる可能性があります。

2002年の総説論文によると、日本国内ではヨーグルトと脂質異常の関係について次の研究が報告されています。

  • ・血清脂質の異常がある成人に市販のヨーグルト500mLを1日3回に分けて、12週間にわたり摂取してもらったところ、善玉コレステロールであるHDLコレステロールが正常値まで増加した。

さらに、海外の研究においても、発酵乳の摂取で血清コレステロールの低下や、血清脂質異常の改善が報告されています。

このことから、乳酸菌を含む発酵乳を摂取することで血液中の脂質に対する改善効果が期待できるといえます。

参考:川瀬 学、Milk Science、51、53-62(2002)

乳酸菌の効果を活用した商品7選

この章では、乳酸菌の効果を活用した商品を7つピックアップして紹介します。機能や有効な乳酸菌の種類などを表にまとめているので、参考にしてください。

恵mugumi ガセリ菌SP株ヨーグルト(雪印)

下記の表に、雪印の「恵megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト」の菌株や効果をまとめました。

項目内容
メーカー名雪印メグミルク株式会社
商品名恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト
効果内臓脂肪を減らすのを助ける
有効な菌株Lactobacillus gasseri SBT2055(ガセリ菌SP株)
特徴特定保健用食品

特定保健用食品を取得しており、食事と一緒に摂ることで、無理なくおいしく健康効果が期待できます。

参考:
雪印メグミルク|恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト
国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部 健康食品情報研究室 |ガセリ菌SP株ヨーグルト 商品情報

ヤクルト1000(ヤクルト)

下記の表に、ヤクルトの「ヤクルト1000」の菌株や効果をまとめました。

項目内容
メーカー名株式会社ヤクルト本社
商品名Yakult(ヤクルト)1000
効果・一時的な精神的ストレスがかかる状況において、ストレス緩和および睡眠の質が向上する・腸内環境の改善
有効な菌株L. カゼイ YIT 9029(乳酸菌 シロタ株)
特徴機能性表示食品

ストレス緩和の評価には唾液中コルチゾール濃度の低下が、睡眠の質の評価には質問票および脳波の結果が用いられています。

参考:
ヤクルト|ヤクルト1000
消費者庁|届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)

ビヒダスプレーンヨーグルト(森永)

下記の表に、森永の「ビヒダスプレーンヨーグルト」の菌株や効果をまとめました。

項目内容
メーカー名森永乳業株式会社
商品名ビヒダスプレーンヨーグルト
効果お腹の調子を整える
有効な菌株Bifidabacterium longum BB536(ビフィズス菌BB536)
特徴特定保健用食品

特定保健用食品を取得しています。腸内の有害な菌を抑制しつつ、腐敗産物が生成されるのを抑えることで、腸内を改善します。

参考:
森永|ビヒダスプレーンヨーグルト 商品情報
国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部 健康食品情報研究室|ビヒダスプレーンヨーグルト 商品情報

明治プロビオヨーグルトPA-3(明治)

下記の表に、明治の「明治プロビオヨーグルトPA-3」の菌株や効果をまとめました。

項目内容
メーカー名株式会社明治
商品名明治プロビオヨーグルトPA-3(ピー・エー・スリー)
効果プリン体の吸収を抑制することで、食後の尿酸値の上昇を抑える
有効な菌株Lactobacillus gasseri PA-3(PA-3乳酸菌)
特徴機能性表示食品

プリン体+乳酸菌入りヨーグルトを摂取したグループでは、プリン体+乳酸菌なしヨーグルトを接種したグループよりも、食後の血清尿酸値の変化量が有意に低いという実験結果が得られています。

参考:
明治|明治プロビオヨーグルトPA-3
消費者庁|届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)

届く強さの乳酸菌W(ダブル)200 (アサヒ)

下記の表に、アサヒの「届く強さの乳酸菌W(ダブル)200」の菌株や効果をまとめました。

項目内容
メーカー名アサヒ飲料株式会社
商品名届く強さの乳酸菌W(ダブル)200
効果・心理的ストレスを和らげ、睡眠の質(眠りの深さ)を高めるのに役立つ
有効な菌株Lactobacillus gasseri CP2305(ガセリ菌CP2305株)
特徴機能性表示食品

日本語および英語論文の研究レビューでは、いずれもCP2305株における睡眠の質やストレス緩和効果について肯定的な結果であることが見出されています。

参考:
アサヒ|届く強さの乳酸菌W(ダブル)200
消費者庁|届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)

カゴメ植物性乳酸菌ラブレダブル(カゴメ)

下記の表に、カゴメの「植物性乳酸菌ラブレダブル」の菌株や効果をまとめました。

項目内容
メーカー名カゴメ株式会社
商品名植物性乳酸菌ラブレダブル
効果・お通じと腸内環境の改善・肌の潤いを守るのを助ける
有効な菌株Levilactobacillus brevis KB290(ラブレ菌)
特徴機能性表示食品

腸内環境の改善および肌の潤いに関する効果は、いずれも、信頼できる論文を対象とした研究レビューにより評価されています。

参考:
カゴメ|植物性乳酸菌ラブレダブル
消費者庁|届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)

小岩井免疫ケアヨーグルト甘さすっきり(小岩井)

下記の表に、小岩井の「免疫ケアヨーグルト甘さすっきり」の菌株や効果をまとめました。

項目内容
メーカー名小岩井乳業株式会社
商品名免疫ケアヨーグルト甘さすっきり
効果・健康な人の免疫機能の維持に役立つ
有効な菌株Levilactobacillus lactis strain Plasma(プラズマ乳酸菌)
特徴機能性表示食品

日本語および英語論文を対象とした研究レビューを通して、表示される機能性が妥当であることを評価しています。

参考:
小岩井|小岩井 免疫ケアヨーグルト甘さすっきり
消費者庁|届出食品の科学的根拠等に関する基本情報(一般消費者向け)

乳酸菌を活用した商品開発の3つのポイント

この章では、乳酸菌を活用した商品開発のポイントを3つ解説します。

1. 利用する菌株を見極める

まずはどのような乳酸菌株を利用するかの見極めが重要です。健康の維持増進に役立つ乳酸菌ですが、人体への健康効果は菌株によって異なると言われています。

同じ科や属、同一種に分類されていたとしても、菌株によって得られる効果や特徴に差があるため、乳酸菌を利用した商品を開発する際には注意が必要です。

先行研究の入念なリサーチを行い、狙った効果が報告されている乳酸菌株を選択してください。また、状況によっては乳酸菌を独自に開発することも可能です。

商品開発の成功は、利用すべき適切な菌株を見極めることが鍵であるといえます。

2. 美味しさを求める

商品の美味しさを求めることも大切な要素です。味が美味しいと継続的に摂取しやすくなるため、消費者が乳酸菌の効果を得やすくなるからです。美味しくて健康にいい商品であれば消費者に届きやすくなり、売り上げアップも期待できます。

また株式会社明治が「農業技術開発功労者 名誉賞状」を受賞した際の受賞理由の1つに、「おいしさを向上させる技術開発」が挙げられており、味の重要性がうかがえます。

機能性と美味しさを両立させることが、乳酸菌商品の開発の重要なポイントです。

参考:明治|乳酸菌が持つ機能特性を解明し、健康に役立つヨーグルト商品を開発していることが評価され、令和4年度農事功績者表彰にて「農業技術開発功労者 名誉賞状」を受賞~酪農業界の食品製造企業として、初めての受賞~

3. トクホや機能性表示食品の取得をめざす

乳酸菌を活用した商品開発のポイントに、トクホや機能性表示食品の取得をめざすことが挙げられます。人体への健康作用などの効果を食品に表示するためには、その機能の科学的根拠や安全性試験の結果などを国に届け出て、許可を得なければなりません。

取得には費用や時間はかかりますが、「国に届け出ている」「国が許可している」という事実から、消費者に安心感や信頼感をアピールできます。

乳酸菌を活かした商品開発を行う際は、トクホや機能性表示食品の取得がおすすめです。

まとめ:乳酸菌の効果は菌株によって変化することを押さえよう

この記事では、乳酸菌の効果と研究例について詳しく解説しました。乳酸菌の機能はさまざまであり、一般的に知られている整腸作用のほか、インフルエンザの予防やメンタルヘルス効果、高血圧の予防などの効果も期待されています。

また乳酸菌を利用した商品も数多く存在し、機能性や安全性について、各社で研究が進められています。

コロナ禍で健康への関心が高まるなか、国内外で乳酸菌の研究が進むことは非常に重要です。乳酸菌は菌種ではなく菌株によって得られる効果が異なるため、目指す機能性に適う菌株を見極めてください。

また弊社では、微生物の培養に関する研究開発技術の知見を活かし、新たなモノづくりに挑戦する企業様、研究機関様とのコラボレーションを行っています。気になる方は、ぜひ下のボタンからお問い合わせください。

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