研究開発コラム

酵素はどのように活用されている?特徴や日常生活から医療までの事例をご紹介!

酵素は発酵食品や酵素洗剤など幅広いところで活用されていることから、酵素という言葉を聞いたことのある方は多いでしょう。

しかし実は、日常生活だけでなく産業や医療でも酵素が活用されており、酵素のもたらす恩恵は非常に大きいといえます。

そこで本記事では、酵素の特徴や、日常生活・産業・医療の活用例を詳しく紹介します。

酵素を活かして新しいビジネスを見つけたい企業、酵素についての知識を増やしたい方はぜひ参考にしてください。

酵素とは

ここでは、酵素の基本情報と酵素の種類を解説します。

酵素についてわかりやすく解説

酵素とは、人間を含む生物が食べた物を消化・吸収・代謝する触媒です。

酵素には多くの種類があり、タンパク質に対する働きは種類別に異なります。

具体的にはタンパク質だけを分解する酵素や脂質のみを分解する酵素などがあり、体のなかで様々な働きをしています。

特定の酵素がなくなると心身の不調に繋がることから、バランスのよい食事を心がける必要があります。

また米や肉などを胃で消化、吸収するためにも酵素は必須です。

酵素がないと人間は生きていけないため、酵素の重要性は高いといえます。

酵素の種類を解説

人間の体内で生成される酵素には、消化酵素・代謝酵素があり、野菜や果物に含まれる食物酵素も体内で作用します。

消化酵素とは、主に食物の消化を助けるために分泌される酵素です。

これらの酵素は口、胃、小腸などの消化器官で活性化され、食物中の大きな分子を小さな単位に分解します。

代表的な消化酵素は、炭水化物を糖に分解するアミラーゼ、タンパク質をアミノ酸に分解するプロテアーゼ、脂質を脂肪酸やグリセリンに分解するリパーゼです。

代謝酵素は生体内での化学反応を触媒し、エネルギーの生成や物質の合成・分解など、生命維持に関わる様々な代謝プロセスを調節します。

日常の呼吸やけがを治したり、お肌の新陳代謝をするのも代謝酵素の働きです。

これらの酵素は通常、生の食品や発酵食品に見られ、食物の栄養価を高める助けとなります。

参考:日本食品分析センター|酵素の基礎知識

酵素の特徴

ここからは、酵素の特徴を紹介します。

作用する物質を選択する

酵素は特定の反応を触媒化するために、その反応に関与する特定の基質を選択的に認識します

「基質」とは酵素がはたらきかける物質であり酵素が特定の基質だけに作用するはたらきを「基質特異性」と呼びます。

酵素と基質の関係をわかりやすく説明すると、酵素が鍵穴で基質が鍵になります。

例えば、脂質を分解できる酵素は脂質と結合できますが、タンパク質は結合できません。

酵素の基質特異性を活かし、温度やpH、基質濃度などを調整すれば、生体内や生体外で発生する数多くの化学反応を制御することが可能です。

温和な条件に反応する

酵素は通常、温和な条件で効果的に機能して酵素を触媒化するため、通常の生体内反応では、温度やpHが特定の範囲に制御されています

例えばヒトの代謝・消化酵素は人間の体内に近い環境を好み、一部の酸性やアルカリ性で働く酵素を除き、多くの酵素は人の体液に近いpH7(中性)で、よく機能します。

作用に適しない場合は効果を失う

酵素は特定の条件でのみ効果的に機能するため、作用に適さない環境では効果を失います。

例えば過度な温度や極端な酸性・アルカリ性条件下では、酵素の構造が変性し、その活性が喪失します。

また酵素の基質が欠如する場合も、酵素は効果的に機能しません。

酵素の摂取が注目される理由

酵素には様々な特徴がありますが、なぜ酵素の摂取がおすすめなのか注目される理由を以下に紹介します。

酵素の生成量には限界がある

人間が一生のうちに酵素を体内で生成できる量は限られています。

年齢が若いときには酵素をたくさん生成できますが、年齢とともに減少していきます。

人間が生きていくために酵素は必ず必要なので、減少した分は外部から酵素を体内に摂取しなければいけません。

近年は加工食品やファーストフードを食べる機会が増えており食品が持つ酵素が最初から失活しているうえ、夜更かしや食生活の欧米化などの生活習慣の変化による代謝のバランス悪化により、酵素を生産する力も低下しているため、酵素の摂取が注目されています。

酵素の不足が引き起こす体のトラブル

酵素が体内に不足すると、いつもより疲れやすい、頭痛がする、冷え性になるなどのトラブルに繋がります。

酵素不足のために体内の代謝活動が鈍くなると血液の流れが悪くなり、体の不調が起こりやすくなります。

体の不調対策としても、足りない酵素を取り入れることは非常に重要といえます。

酵素の利用例(日常生活)

日常生活では、酵素を利用している日用品や食品は多くあります。

ここからは酵素が日常生活において、どのように活用されているのか紹介します。

酵素を利用している日用品をご紹介

日常の洗剤や洗濯洗剤には、酵素が利用されています。

洗剤に含まれるプロテアーゼ酵素は、タンパク質を分解して血液や食べ物のシミを取り除くことが可能です。

またアミラーゼやリパーゼなどの酵素は、デンプンや脂質の汚れを効果的に分解します。

酵素の力を借りることで洗剤や洗濯洗剤はより強力な洗浄力を発揮し、日常の衣類や生活用品のお手入れに役立っています。

酵素を利用している食品をご紹介

発酵食品のなかには、ヨーグルト、チーズ、醸造酒、醤油などがあり、微生物による発酵プロセスで酵素が活躍します。

酵素により味や風味が変化し、まろやかになるほか体内で消化吸収が促進されます。

また、近年では市販の食品に食物酵素が添加されることも少なくありません。

例えば、パイナップルやパパイヤ由来のブロメラインやパパインが、肉やタンパク質の分解を助けるために食品に加えられています。

酵素の利用により、食品の美味しさや栄養の吸収率が向上します。

食物酵素を上手に摂るポイント

食物酵素を上手に摂るには、新鮮な生の食品を摂ることが重要です。

食物酵素は生の食品に多く含まれているため、新鮮な果物や生野菜を摂ることで、自然な形で食物酵素を取り入れることができます。

例えば、生野菜のサラダや生ジュースは調理が少ないため、食物酵素をできるだけ保持する方法として最適です。

またヨーグルト、キムチ、醤油、味噌などの発酵食品には、酵素が豊富に含まれているため、積極的に摂取すると効率よく酵素を取り込むことができます。

ただし近年の食生活で増加している加工食品やインスタント食品は、製造過程のなかで加熱されたり、食品添加物が加えられているため酵素活性が失活し、食物酵素を摂取しにくくなっています。

加工食品やインスタント食品のみの食事は、なるべく避けることが重要です。

酵素の活用例(産業)

ここからは、酵素の産業界での活用例を紹介します。

産業用酵素とは

産業用酵素とは、酵素を利用して様々な産業プロセスを改善するために使用される酵素です。

産業用酵素は、洗剤製造、食品製造、繊維産業、バイオエネルギー製造など、幅広い産業分野で利用されています。

産業用酵素活用例(食品製造用酵素)

プロテアーゼ酵素は、肉や乳製品の製造で活躍し、ソーセージやチーズなど加工食品製造のプロセスでタンパク質の分解を促進します。

アミラーゼ酵素はパンやビールの製造に使われ、でんぷんをブドウ糖に変換して発酵プロセスをするため食品製造酵素として重要です。

また、セルラーゼ酵素は野菜や果物のセルロースを分解し、食材を柔らかくします。

これらの酵素の働きを活かせば、効率的な食品の生産プロセスや製品品質向上に繋がるでしょう。

酵素の活用例(医療)

酵素は医療業界でも活用されていて、重要な役割を果たしています。

ここからは、医療業界での酵素の活用例を詳しく紹介します。

医薬品(消化酵素製剤)としての活用例

消化酵素製剤は、胃や腸の消化機能が低下している患者の治療に活用されます。

例えば、膵臓の機能低下や慢性膵炎患者にはアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどの消化酵素を含んだ製剤が処方され、食物の適切な消化をサポートします。

また膵囊胞線維症患者では粘液が膵臓の導管を詰まらせ、消化酵素が正しく分泌されないため、消化酵素製剤の摂取が必要です。

これにより、食物が適切に体内で消化され、栄養吸収が助けられます。

臨床診断への活用例

医療酵素は臨床診断に幅広く活用されています。

バイオマーカー検査では、心筋梗塞の診断に心臓筋細胞から放出される酵素(例: クレアチニンキナーゼ、トロポニン)の検査が行われ、心筋梗塞の診断や重症度の評価が可能です。

肝機能評価では、肝臓の損傷を示すアルカリフォスファターゼやアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼなどの酵素の活性が測定されたうえで治療方針が立てられます。

代謝性疾患の検査では、患者の血液や尿中の酵素活性や代謝産物の量の測定を通じて診断やモニタリングが行われます。

医療酵素の活用は診断から治療まで様々な領域で行われ、患者の健康管理において重要な役割を果たしているといえます。

まとめ:酵素の活用例を参考にして新たな取り組みに繋げよう

本記事では、酵素の種類や特徴、様々な業界の活用例について紹介しました。

酵素は日常生活や産業、医療だけでなく多くの業界でも活用することが期待されています。

本記事で紹介した酵素の活用例を参考にして、自社で酵素を活用するきっかけや新規ビジネスなどに繋げてください。

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