研究開発コラム

【保存版】バイオマスの種類と活用法を徹底解説 意外な利用例とは

「バイオマスにはどのような種類があるのか気になる」「バイオマス燃料の活用法が知りたい」とお悩みの方は少なくありません。バイオマスは世界的に注目されているキーワードであるため、一度情報を整理しておきましょう。

この記事では、バイオマスの種類と活用法について徹底解説します。それぞれの種類や特徴を押さえることで、利用される場面や具体的な活用方法が理解しやすくなります。

またバイオマス認証の概要と代表例についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

バイオマスは持続的に再生可能な資源!

バイオマスとは生物由来の資源の総称であり、とくに化石燃料を除いたものを指します。

化石燃料とは異なり、水と二酸化炭素、太陽エネルギーを利用して生み出されるのが特徴です。

地球温暖化の原因と言われている二酸化炭素(CO₂)や温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギー源として、世界的に注目されています。

またバイオマスは本来廃棄されるはずの資源を使用することから、ゴミの削減になるうえ循環型社会の形成にも役立ちます。

バイオマスの3つの種類

この章では、バイオマスの3つの種類について解説します。

1. 廃棄物系バイオマス

廃棄物系バイオマスは、下記の通り5種類あります。

項目活用方法特徴
食品廃棄物・農場の堆肥や肥料・家畜の飼料・固形燃料による発電・バイオディーゼル燃料・生ゴミや植物などの再生可能な有機資源を原料とするプラスチックを破砕、乾燥させることで固形燃料として活用する・廃食用油は加工し液体燃料として、バイオディーゼル燃料に利用可能
家畜ふん尿・農場の堆肥・バイオガスなどによる発電・家畜のふん尿を発酵させることで堆肥化し活用する・メタンガスを発生させ、発電させることも可能
下水汚泥・農場の堆肥・バイオガスなどによる発電・汚泥から発生するガスにより発電する
農業残渣・農場の堆肥や肥料・家畜の飼料・バイオガスなどによる発電・バイオエタノールによる燃料としての利用・生産される作物のうち非可食部(トウモロコシのわらやもみ殻など)を利用するため、無駄がない・堆肥や飼料、エネルギー利用など活用範囲が広い
木質系廃棄物・バイオガスなどによる発電・バイオエタノールによる燃料としての利用・炭化による燃料としての利用・木材由来のバイオマスを有効活用することで、森林の適切な整備に繋がる・森林整備のため、山村地域の活性化が期待される

バイオマスの用途は広く、今後も活用が期待されています。

参考:環境省|廃棄物系バイオマスの種類と利用用途

2. 未利用バイオマス

未利用バイオマスとは、農作物のうち食用でない部分や、樹木伐採の際に建築用として利用できない林地残材などを指します。

項目活用方法問題点
稲わら・農地に敷き耕す、すきこみとして活用・一部は畜産用飼料などに利用される・収集、運搬、管理のコストが大きい・比重が小さく、運搬および貯蔵効率が悪い
もみ殻・土壌改良材や家畜の寝床などに敷く敷料、燻炭などに利用される・収集、運搬、管理のコストが大きい・比重が小さく、運搬および貯蔵効率が悪い・広い地域で発生するなどの特性から低コスト化が難しい
果樹剪定枝・農地で破砕し農業堆肥として活用・一部では、炭化させストーブ燃料に利用される剪定枝の特徴から、収集、運搬コストが大きい。量が少ない。
林地残材(広葉樹)・菌床用おが粉、ペレット燃料として活用・一部ではバイオマス発電として利用される・作業用機械や人材の確保が必要・場所によっては搬出や輸送が困難

福島市では、果樹剪定枝を引き取ってほしい生産者とストーブの燃料を得たい方のためのマッチング事業を行っており、未利用バイオマスを有効活用する取り組みが行われています。

参考:
農林水産省|未利用バイオマスの活用状況と課題
福島市|果樹剪定枝の取り扱いについて

3.資源作物

資源作物とは、廃棄物や未利用の資源を利用するのではなく、初めから資源目的で栽培する作物です。

下記の表に代表的な作物について特徴などをまとめました。

項目活用方法特徴
トウモロコシ・バイオエタノールなどにてエネルギー利用される・長期収穫が可能・肥料の吸収性が高い
ヤナギ・バイオエタノールなどにエネルギー利用される・寒冷地で栽培可能・挿し木で増える・短期間で繰り返し収穫が可能
エリアンサス・バイオエタノールなどにエネルギー利用される・ペレット燃料として活用・肥料を必要としない、乾燥に強いなど栽培に手間がかからない・冬に立毛乾燥が起こり、運搬、貯蔵しやすい

近年では、寒冷地や乾燥に強く育てやすいエリアンサスが注目されています。

バイオマスの活用法

この章では、バイオマスがどのように活用されているかを解説します。

マテリアルとしての活用

マテリアル利用とは、バイオマスを原材料として利用することです。具体的な例は、次のとおりです。

・家畜のエサとして使用する飼料化
・農場の堆肥として使用する堆肥化
・建築材などで使用するための材料利用
・バイオマスプラスチック

バイオマスプラスチックは、植物由来のバイオマスを原料として製造されるプラスチックです。

石油を利用しないため環境に優しく、地球温暖化防止や石油への依存回避に役立ちます。

現在では世界中で研究、開発が進められており、従来のプラスチックから、バイオマスプラスチックへの置き換えが呼びかけられています。

燃料としてのエネルギー利用

バイオマスには、エネルギーを得るための燃料としての活用方法があります。

一般的にバイオマス燃料として知られており、すでに実用化されているものから、研究開発中のものまで幅広く存在しているのが特徴です。

具体的には、下記のような活用が挙げられます。

・直接燃焼してエネルギーを得る
・熱化学的に変換を行い利用する
・化学的に変換を行い利用する

今後も研究が進むにつれ、活用方法は増えていくといえます。

バイオマス燃料の種類と特徴

この章では、バイオマス燃料の種類と特徴について解説します。

木質バイオマス

木質バイオマスとは木材由来のバイオマスのことで、主に下記の種類があります。

・樹木の伐採などで発生した間伐材
・製材工場などから出る樹皮やのこ屑
・建設現場や住宅の解体材


木質バイオマスは、発生する場所やバイオマスの状態(水分量など)を考慮し、特性に応じて活用することが重要です。

樹皮やのこ屑の約95%、住宅などの解体材の約90%は製紙原料や燃料、木質ボードなどに再利用されています。

しかし樹木伐採で発生した間伐材のうち、使用されず放置されている林地残材が多く存在しています。

間伐材の場所によっては運搬や輸送が困難であるため、有効に利用するためには輸送などの効率的な仕組みの構築や、新たな需要の獲得が必要です。

未利用の間伐材に価値を与えられれば、林業経営や森林整備の促進、ひいては周辺地域の活性化にも繋がるとされています。

参考:林野庁|木質バイオマスとは

バイオエタノール

バイオエタノールとは、トウモロコシやサトウキビ、木材などのバイオマスを発酵させて製造されるエタノールです。

バイオエタノールの利用方法には、次の2種類があります。

・ガソリンと混合して利用する
・添加剤(ETBE)を生成し、ガソリンに添加して利用する

ガソリンとバイオエタノールを直接混ぜて利用する場合は、環境保護などの観点から蒸気圧の低いガソリンを準備することが必要です。

日本ではガソリンに3%のバイオエタノールを配合したE3ガソリンが主に使用されているほか、基準を満たした自動車に限り10%バイオエタノール配合のE10ガソリンが利用できます。

添加剤を合成して使用する場合、蒸気圧を管理する必要がなくガソリンと親和性があるため自動車使用時のトラブルが少ないのが特徴です。

参考:農林水産省|バイオ燃料生産拠点確立事業について

バイオディーゼル燃料

バイオディーゼルとは、なたね油や大豆油、使用済み食用油などから作られる燃料です。

飲食店や家庭から排出された廃食用油を回収し、メタノールとアルカリ触媒を化学反応させることでバイオディーゼル燃料として生まれ変わります。

本来捨てられるはずの油から生成されるためゴミの削減にもなり、環境への負荷が少ない地球に優しい燃料といえます。

軽油の代替燃料として活用され、トラックやボイラー、発電機にも利用できるうえ、軽油とほとんど同じように扱えるのがメリットです。

また軽油と比較してCO₂や煤(すす)、一酸化炭素などの有害物質の排出を抑えられるため地球温暖化防止に役立ちます。

一般的に軽油に5%のバイオディーゼル燃料を混合したもの、バイオディーゼル100%の燃料がよく使用されます。

バイオガス

バイオガスとは家畜のふん尿や食品残さ、生ゴミなどを微生物によって分解、発酵して発生させたメタンガスのことです。

生成されたバイオガスは燃えやすい性質があるため、発電などに利用される他、都市ガスなどのエネルギーに利用されています。

バイオガスの原材料は、本来廃棄物として焼却処理されるものを使用するためゴミの削減に役立つほか、分解されなかった物質も農場の堆肥として利用されるため無駄がありません。

さらにその土地で出た廃棄物を回収、メタンガスをエネルギーとして利用し、残った発酵物質を地域の農地に堆肥や肥料として還元することで、地産地消かつ循環型社会を形成できます。

しかし全国のメタンガス化施設は42施設しかなく、十分に普及しているとはいえないのが現状です。

参考:環境省|廃棄物・リサイクル対策

バイオマス認証の基本と種類

この章では、バイオマス認証の基本と種類について解説します。

GGL(Green Gold Label)

GGLは2002年に設立された歴史のある認証スキームの一つです。

持続可能なバイオエネルギーの製造、加工、輸送およびエネルギーの最終利用までを考慮、担保されていることを証明できます。

GGLの認証は独立した第3者組織が行うことにより、信頼性が担保されます。

認証範囲が広く、木質バイオマス、農業残さなどの固形バイオマスのほか、液体バイオマスも含まれているのが特徴です。

またGGL認証では毎年監査が実施され、認証に適切かどうかを判定されます。不適合がない場合は証明書が発行され、認証が継続される仕組みです。

参考:GGL|公式サイト

FSC(Forest Stewardship Council)

FSC認証とは、森林および木材製品が、責任ある持続可能な方法で管理、利用されていることを保証する認証です。

認証ラベルを製品に表示することで環境、社会、経済の便益に適った責任ある森林管理を通じて生産されていると消費者に示すことが可能です。

認証を受けるには、森林管理と木質ペレットなどの木材製品の加工、流通管理が適切に行われている必要があります。

また森林から消費者の手に届くまでの全工程に関わる組織が認証を受けなければなりません。

FSCの認定では独立した第3者機関が審査を行うことで、信頼性を担保しています。

参考:
FSC|FSC認証とFITバイオマス発電燃料の調達
FSC|公式サイト

SBP(Sustainable Biomass Program)

SBP認証とはエネルギー利用のための木質バイオマスが環境保護などの観点から、持続可能なバイオマスとして調達されていることを示す認証です。

EUでは欧州委員会によって正式に認められ、認証スキームとして活用されてきました。

認証にはサプライチェーンの各段階で認証を得る必要があるため、製品の加工、流通管理を対象としたCoC認証を並行して取得する必要があります。

また独立した第3者的組織が審査を行うことで信頼性を担保しています。

参考:SBP|公式サイト

ISCC(International Sustainability & Carbon Certification)

ISCC認証とは持続可能かつ追跡可能で、森林破壊のないサプライチェーンを認証する仕組みのことです。

バイオマスおよびバイオエネルギーを専門に扱う世界初の認証制度であり、ISCC EU、ISCC PLUS、ISCC CORSIAの3つの規格が存在します。

ISCC EUはEUをEU市場向けの認証企画であり、日本ではISCC PLUSが対象です。ISCC PLUSはバイオマス燃料以外も範囲に含まれ分野が幅広いのが特徴です。

またISCC CORSIAは航空業界を対象としており、取得すればサステナブルな航空燃料であることを証明できます。

参考:ISCC|SCC / ISCC PLUS認証の概要・各規格と審査事項

まとめ:バイオマスの特徴を知り理解を深めよう

本記事ではバイオマスの種類と活用方法、認証制度について詳しく解説しました。

バイオマスは生物由来の資源であり、石油に代わる持続可能なエネルギーとして注目されています。

バイオマスは、上手に利用すると限られた資源を有効活用できるうえ、ゴミの削減や循環型社会の実現に貢献できるのが大きな魅力です。

研究開発段階のものも多く存在していますが、今後の技術発展でより多くのバイオマスが利用されると予想されます。

またバイオマス認証の制度も複数あるため、認証の取得を検討されている場合はぜひ取得の条件などを詳しくチェックしてください。

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