研究開発コラム

SDGsと食品ロス|目標12から見る持続可能な社会

食品ロスは、世界的に注目されている問題です。食品ロスとは生産から消費、廃棄までの過程での食品の無駄な損失をさし、環境問題や社会問題とも深く関連しています。

食品ロスはSDGs(持続可能な開発目標)の中でも、特に目標12「つくる責任つかう責任」の下で注目されており、今後も注目度は高まるといえるでしょう。

そこで本記事では、SDGsと食品ロスの関係、世界と日本の食品ロスの現状、そして食品ロス削減の取り組みについて解説します

食品ロス削減に取り組む意義について考えるきっかけとして、ぜひ最後までお読みください。

SDGsとは?

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語に直訳すると「持続可能な開発目標」となります

SDGsには17の目標が掲げられており、これらを2030年までに達成することを求めています。今回は17の目標の中で、食品ロスと関係が深い目標12について詳しく解説します。

目標12「つくる責任つかう責任」とは

SDGsの目標12は「つくる責任つかう責任」です。この目標は持続可能な生産と消費を目指すもので、資源の効率的な利用や環境への負荷の軽減を目的としています。

持続可能な生産と消費を邪魔する要因のひとつは、食品廃棄や有価物の投棄など資源の浪費です。

ここで言う有価物とは、ある人にとっては不要でもそのもの自体にはまだ価値があり、売却益が見込めるものをさします。

より少ない資源で、より良質で多くのものを得られるような社会の形を整えることが、目標12の求めることといえます。

目標12のターゲット

SDGsの目標12には、目標として8つのターゲットと、3つの具体的な対策が発表されています

12−1開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
12−22030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12−32030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
12−42020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12−52030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12−6特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12−7国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12−82030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12−a開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12-b雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12-c開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。

以上のように、目標12のターゲットと施策は持続可能な消費と生産の実現と資源の効率的な利用を推進することで、持続可能な社会の構築を目指しています。

参考:外務省|SDGsグローバル指標

食品ロスとその原因

食品ロスの内容は、大きく事業系と家庭系の2つに分けられます。

事業系

事業系の食品ロスとは、農産物などが収穫されてから小売店に並ぶまでの過程で、食材が無駄に捨てられてしまうことです。

途上国においては技術が未発達のため収穫のときにとり残しがある、加工のときに無駄が多いなどが原因としてあげられます。

また先進国においては食品が過剰生産になることがある、加工の段階で見た目の悪いものが廃棄される、消費者が食品を捨てる経済的な余裕があることなどが原因です。

家庭系

家庭での食品ロスの原因は、食べ残しによる廃棄、調理の際に皮をむきすぎてしまうなどの過剰除去です。

また期限切れになってしまった食品、保管状態が悪く腐った食品も食品ロスの原因といえます。

世界と日本の食品ロスの現状

ここからは、食品ロスの種類、そして世界と日本の食品ロスについて解説します。

食品ロスの種類

食品ロスの種類は、主に次の3つに分類されます

①生産段階でのロス

農産物の収穫・加工・輸送の過程での損失です。収穫された農作物の保管状況が悪く腐敗したり、輸送中に傷がつくことで生じます。

②流通段階でのロス

食品が運送中に破損したり、保存条件が悪く腐敗するなどによって生じます。

③小売業者や消費者によるロス

食品が賞味期限を過ぎたり、見た目に問題があると判断されたりすることで、小売業者や消費者が食品を廃棄することで生じます。

食品ロスの段階を知っておくことで、自分たちが食品ロスの対策をする際のポイントはどこなのか分析しやすくなります。

世界と日本の食品ロス

世界の食品ロスの現状は、FAO(国際連合食糧農業機関)により報告されています。

「世界の食料ロスと食料廃棄(2011)」によれば、世界中で生産された食料の約3分の1が廃棄されており、その量は1年当たり約13億トンにのぼります。

また日本でも大量の食品ロスがあり、農林水産省の報告では、令和元年度の食品ロス量は年間で570万トンでした。

これは、国民1人当たり茶碗1杯のご飯に相当する量の食品を毎日捨てている計算になります。

参考:
農林水産省|国内外における食品ロスの現状及び 農林水産省における事業系ロス削減の取組について
国際農林業協働協会|各地域における消費および消費前の段階での1人当たり食料のロスと廃棄量

食品ロスと環境問題の関係

ここからは、食品ロスが引き起こす環境問題を3つ解説します。

資源の浪費

食品ロスは、生産や流通、消費に関わる資源の浪費を招きます

水、土地、エネルギーなどの資源が食品の生産に使用されるため、食品を捨てることは、これらの資源を捨てることと同じといえます。

温室効果ガスの排出

廃棄された食品を焼却処分するときに、温室効果ガスの二酸化炭素が発生することが知られています。

また、世界では廃棄された食品を焼却処分せず埋め立て処理をしているところもあります。

そして埋め立てた廃棄食品が分解されたときにメタンガスが生じますが、このメタンガスはCO2の25倍の温室効果があると言われています。

水の浪費と水質汚染

あまり知られていませんが食品生産には大量の水が必要であり、世界で利用されている水の約7割が、食品の生産に使われています。

また食品産業においては、用水原単位(出荷額100万円当たりの1日使用水量)の削減は従来から重要な課題となっています。

食品ロスが大きくなればそれらの水が無駄になるため、水資源の不足を招くと考えられます。

また廃棄物処理過程で発生する有機物が、水質汚染の原因となることも少なくありません。

食品ロスに関する社会問題

食品ロスによる社会問題も、取り組むべき問題としてあげられています

中でも深刻なのは、飢餓の問題です。

現在の世界人口はおよそ79.5億人ですが、2022年時点で約8億2800万人が飢えに苦しんでいるとされています。割合で言うと、約10人に1人が飢餓で苦しんでいるといえます。

食品ロスが発生する一方で、食糧不足や栄養不良の問題が解決されないという矛盾が、社会的な不公平を生み出しています。

参考:国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、国連世界食糧計画(国連WFP)による共同制作の報告書|「世界の食料安全保障と栄養の現状」

食品ロス削減の取り組み

ここからは現在までに行われている食品ロス削減の取り組みと、これから取り組むべきことについてお伝えします。

政府の取り組み

日本政府では、食品ロスの削減を目標に「食品ロス削減推進法」を令和元年10月1日に施行しました

また、国民の意識を高めるために、消費者庁の指示で小売店などが「てまえどり」を呼びかけています。

「てまえどり」はスーパーやコンビニエンスストアなどで手前に陳列されている賞味期限が近い商品を選ぶことです。

賞味期限が近いものから購入することで、食品が無駄に廃棄されることを防ぐ目的があります。

さらにフードバンク活動の普及を推進し、活動を行う団体を支援しています。

フードバンクとは、品質に問題はないものの通常の販売が困難な食品や、食材規格外品などを、福祉施設やこども食堂に無料で提供する活動です。

フードバンクが普及すれば、廃棄せざるを得なかった食品を有効活用できます。

参考:
消費者庁|食品ロスの削減の推進に関する法律
一般社団法人全国フードバンク推進協議会

自治体の取り組み

自治体ごとに内容は異なりますが、これまでに食品ロスを防ぐ様々な取り組みが実施されています

東京都足立区では、災害用備蓄食料を利用した給食を提供することで、備蓄食料が消費期限切れで廃棄されることを防いでいます。

また、静岡県では「食べきり割」を実施しています。これは飲食店での食べ残しによる廃棄を減らすことが目的で、協力店舗で食事をとった場合には割引サービスを適用するという取り組みです。

参考:
消費者庁|災害時用備蓄食料を活用して、おいしい給食に変身 (東京都足立区・足立区立梅島小学校)
静岡県|ふじのくにたべきりやったね!キャンペーン

企業の取り組み

食品製造を担う企業では、食材を無駄にせず100%活用する取り組みを行う企業が増えてきました

また外食産業ではミニサイズなど様々な提供サイズを準備したり、食べ切りを呼びかけるなどで食べ残しを防ぐ取り組みを行っています。

小売業でも、形が悪く通常販売できない野菜を「訳あり商品」として販売したり、賞味期限が近い商品を割引で販売するなど、廃棄を防ぐ工夫をしています。

家庭でできる食品ロス対策

日本における食品ロスは、令和元年度では年間で570万トンであり、このうち半分の261万トンが、家庭系による食品ロスです。

各家庭での食品ロスを抑えることは、日本の食品ロスを抑えることに大きく貢献できるといえます。

ここからは、家庭での食品ロスを防ぐ工夫を3つお伝えします。

参考:農林水産省|国内外における食品ロスの現状及び 農林水産省における事業系ロス削減の取組について 

買いすぎない

もっとも大切なことは「買いすぎない」ことです。家にまだ残っているのに同じ商品を買ってしまった、という経験がある方は少なくありません。

買い物に行く前に冷蔵庫の中をのぞき、必ず家にある食材のストックを確認することが大切です。

買ったものは正しく保存する

ずさんな方法で食材を保管すると、食材が早く傷んでしまいます。

買い物から帰ったら買ってきた食材は放置せず、すぐに冷蔵庫や冷凍庫にしまってください。

また野菜をあらかじめカットし小分けにして冷凍するなど、長く保存できる工夫をするのもおすすめです。

食べ切る工夫をする

いつもつくりすぎてしまう料理があるときは、家族の食べ切れる量や好みを把握して、つくりすぎないよう気をつけることが大切です。

また冷蔵庫の奥から期限切れの食品が出てきた、という事態も避ける必要があります。

食品は期限の古いものを手前に、新しいものは奥にしまうことを習慣にし、ローリングストックをしてください。

まとめ:食品ロス削減に取り組む意義は大きい

本記事では、SDGsと食品ロスの関係、世界と日本の食品ロスの現状、そして食品ロス削減の取り組みについて解説しました

食品ロスは環境への負荷を増加させ、資源の無駄遣いを引き起こすだけでなく、飢餓や経済的格差といった社会問題も引き起こします。

日本においても食品ロスの問題は大きく、国や自治体、企業が様々な取り組みを実施してきました。

1個人、1企業としてできる範囲の取り組みから食品ロスを減らしましょう。

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